米ロサンゼルスで急拡大するスポーツビジネスの経済効果

(米国)

ロサンゼルス発

2025年11月20日

米国メジャーリーグ・ベースボール(MLB)所属のロサンゼルス・ドジャースがワールドシリーズ連覇を果たし、ロサンゼルスエリアは大きな盛り上がりを見せている。ロサンゼルススポーツ評議会が10月に公表したロサンゼルスにおけるスポーツ関連の経済効果に関するレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、2024年は前年比3.4%増となる121億ドルの経済効果をスポーツ産業が生み出したと分析している。これは、プロスポーツと大学スポーツの双方の収入増加によって牽引され、観客数の増加やイベントの拡大、所得の増加が要因とされている。2018年のロサンゼルスエリアのスポーツ産業における経済効果は62億ドルだったとされ、この6年間で95%増加したこととなる。

今後、ロサンゼルスでは2026年にFIFAワールドカップ、2027年にナショナル・フットボール・リーグ(NFL)スーパーボウル、2028年にオリンピック・パラリンピック競技大会の開催が予定されており、さらなる経済効果が期待できるが、ロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)のスティーブン・チャン最高経営責任者(CEO)は、地元紙「ロサンゼルス・ビジネス・ジャーナル」(電子版11月10日)のインタビューで現状について語っている。

まずプロスポーツについては、ロサンゼルス・ドジャースの「大谷翔平効果」に加え、今後「山本由伸効果」が表れることにも言及し、スター選手の存在によってチケット販売、グッズ販売のみならず、ファンエンゲージメント全体を押し上げたと述べている。また、地元の女子プロサッカーチーム「エンジェルシティ・フットボールクラブ」を例に上げ、地域社会と関わりを強化することによって、根強いファン層を築き上げ、チームの成績にかかわらず、ファンがスタジアムに足を運ぶ状況を作り出したとしている。さらに、NFL所属のロサンゼルス・ラムズは近年、メキシコ、オーストラリア、中国といった米国外へのマーケティングを強化し、海外ファンからの新たな収益がもたらされているという。

プロチームのみならず、マイナーリーグや新興スポーツの影響力も高まっており、ピックルボール(注)が近年盛り上がりを見せ、クリケットやラグビーもロサンゼルスに進出し始めており、これらが新たなファン、観客を呼び込み、経済活動に貢献していると述べる。

ロサンゼルスのスポーツ産業は雇用面でも大きな貢献を果たしているが、スタジアムの案内・売店スタッフのみならず、マーケティング、ファンエンゲージメント、ロジスティクスなど幅広い人材が求められ、サイバーセキュリティーやモバイルアプリ開発、人工知能(AI)を活用した顧客管理データ分析の需要が高まっている。また、ロサンゼルスでは持続可能性がキーワードとなっているため、スポーツイベントにおけるリサイクル、環境コンプライアンスに関する仕事も急速に増加している、とチャン氏は述べている。

(注)テニス、バドミントン、卓球をもとに考案された米国発祥の競技で、コートにおいて、プラスチック製で中空に多数の穴が開いたボールを木製などの固いパドルで打ち合うスポーツ。

(堀永卓弘)

(米国)

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