持続可能なイノベーションフォーラム2025、都市の創造力が牽引する気候変動対策について議論
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年11月14日
ブラジル・サンパウロ市内のルネサンス・ホテルで11月6~7日、Climate Action(注1)主催の「持続可能なイノベーションフォーラム(Sustainable Innovation Forum)2025」が開催された。フォーラムの2日間にわたる議論の締めくくりとして、「The power of hope:Inspiring action in a time of climate resistance」と題したクロージングパネルが行われた。
本パネルでは、都市が交通、エネルギー、建築環境の分野でどのように気候変動対策による成果を実現しているか、また、国際的な気候目標にどう貢献できるかの議論が行われた。登壇者は、クリスティーナ・ガンボア氏(注2)、ヒュー・リム氏(注3)、ティティ・オショディ氏(注4)。モデレーターはキルステン・ダンロップ氏(注5)が務めた。
ガンボア氏は、都市の建築環境が二酸化炭素(CO2)排出削減に果たす役割を強調し、「グリーンビルディング(注6)は単なる技術ではなく、社会的インパクトを生む手段である」と述べた。リム氏は、シンガポールの都市計画事例を紹介し、「都市は実験の場であり、成功事例を国レベルに拡張することが可能」と語った。オショディ氏は、ナイジェリア・ラゴス州の取り組みとして、廃棄物循環型経済や若者の気候教育プログラムを紹介し、「地域に根ざした政策が、国際的な変革を促す」と述べた。
議論では、都市が限られた予算や資源の中で、創造的な官民連携やブレンデッド・ファイナンス(注7)を活用し、インパクトの高い気候プロジェクトを推進している点が共有された。また、都市レベルの野心的な政策が、国の気候政策や国際的なコミットメントに影響を与える可能性についても言及された。
モデレーターのダンロップ氏は、「希望は戦略ではなく、変化の触媒である」と締めくくり、都市の行動がグローバルな気候変動対策の原動力となることを強調した。
このクロージングパネルをもって、2日間にわたるフォーラムは幕を閉じた。都市が持つ実行力と創造性を生かし、グローバルな気候目標達成に貢献する可能性があらためて示された。
持続可能なイノベーションフォーラム2025クロージングパネルの様子(ジェトロ撮影)
(注1)Climate Actionは、気候変動対策に関する国際会議や企業連携を推進する英国拠点の独立系の国際組織。
(注2)クリスティーナ・ガンボア氏は、建築の脱炭素化と持続可能性を世界規模で推進する国際NGOであるWorld Green Building CouncilのCEO。
(注3)ヒュー・リム氏は、都市の持続可能性と生活の質向上を世界に広めるシンガポールの公的研究機関であるCentre for Liveable Citiesのエグゼクティブ・ディレクター。
(注4)ティティ・オショディ氏は、ナイジェリア・ラゴス州政府 気候変動・循環型経済担当特別顧問。
(注5)キルステン・ダンロップ氏は、気候変動に対応するイノベーションを、欧州を中心に企業、政府、研究機関など多様な主体と連携して推進する非営利公共–民間パートナーシップ機関であるEIT Climate-KICのCEO。
(注6)環境に配慮した設計・建設・運用がなされた建築物のこと。
(注7)政府や国際機関などによる公的資金と民間資金を組み合わせて、社会的インパクトのあるプロジェクトへの投資を促進する仕組みのこと。
(榊原悠生)
(ブラジル)
ビジネス短信 6d4770b80519b425




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