山東省のAI産業向け補助金制度、AI学習用データベース構築に最大150万元支援

(中国)

青島発

2025年11月20日

ジェトロは10月10日、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)山東省委員会と共催で「ビジネス環境改善に向けた政経対話会2025(山東省・日本企業セッション)」を同省青島市で開催した(2025年10月17日記事参照)。同対話では日系企業から政府の補助金政策に関して詳細な説明を求める要望もなされ、これに対して山東省政府側からは工業情報化庁が設備投資に関する補助金政策の具体的内容をフォローアップする旨言及があった。本稿では、このような状況を踏まえて、ジェトロ青島事務所が山東省の補助金制度に関して把握した内容を一部紹介する。

山東省工業化・情報化庁は8月29日、人工知能(AI)産業の育成を目的に「山東省省級『モデルクーポン』奨励補助資金管理弁法および実施細則」と「山東省省級『コーパスクーポン』奨励補助資金管理弁法および実施細則」を公布した。これにより、補助制度の法的枠組みと運用ルールが確定し、大規模AIモデルと産業向けコーパス(注1)構築を支援する仕組みが本格的に始動することになる。

モデルクーポン奨励補助資金は、自社開発の基盤モデル(注2)、または既存の大規模モデルを基にした業界特化型モデルを対象とする。パラメータ数(注3)が10億以上で、汎用モデル2種類以上と特定シナリオ向けモデル3種類以上を含むことを条件とする。加えて、技術革新性と業界適用性が高く、第三者評価機関の評価や、産業・行政・民生・科学研究などの分野での導入実績が求められる。補助額は、評価結果に応じて最高100万元(約2,100万円、1元=約21円)、75万元、50万元の3段階に分かれており、1回限りで支給される。同一企業が受給できる補助の累計上限額は200万元となる。同補助の年間採択件数は約30件とされている。

コーパスクーポンは、AI学習用の優良データベース(コーパス)構築プロジェクトを対象とする。産業関連データ10万件以上を含み、山東省の重点産業に合致し、大規模モデル企業での検証実績があることを条件とする。大学・研究機関との共同計画策定を奨励し、データベースの構築期間は1年以内とする。また、明確な活用計画とエコシステム構築方針が必要で、公共データの開放推進も評価の対象となる。初回補助額は最高75万元で、評価結果が「優秀」の場合は追加で最高75万元の補助が認められ、合計で最高150万元となる。年間採択件数は20件以内とされている。

山東省はAI産業を重点分野に位置付けており、省政府の推進計画に基づき、2027年までに、垂直業界向けの基盤的大規模モデルを20個育成し、50件以上の複製・普及可能なモデルとなるユースケースを構築し、100件以上の融合型モデル事例を創出するとしている。

(注1)統計的な分析や研究を行う目的で集められ構築された言語テキストの集合体。

(注2)大量の多様なデータで学習され、さまざまなタスクに適用できる汎用的なAIモデル。

(注3)AIが最適解を導くための媒介変数の数。

(張雪雯)

(中国)

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