EV市場は全世界的に成長も新興国中心にICE車の需要衰えず、IEA特別レポート
(世界)
調査部国際経済課
2025年11月20日
国際エネルギー機関(IEA)は11月18日、特別レポート「世界の自動車産業の次なる展開
」を発表した。IEAは、世界の自動車産業が電動化や生産地の再編、新興国への需要地のシフトなど、変革の過程にあると指摘した。
販売数の動向をみると、内燃機関搭載車(ICE車)が2017年をピークに2024年までに30%減少した一方、電気自動車(EV)(注)は同期間に14倍以上へと急拡大しており、2024年の自動車販売数の2割超を占めた。生産地の変化では、中国はEVおよび同バッテリー製造への大規模投資に後押しされ、2024年に世界最大の自動車輸出国となっており、最大のEV輸出国でもある。中国はEVコストの中核を占めるバッテリーの競争力が高く、中国製セルは欧州製と比較すると30%以上、米国製と比較すると20%以上も安い。
需要面の変化では、欧米や中国ではICE車の販売が減少した一方、潜在需要が大きい東南アジア、インド、中東、中南米などの新興国市場では、充電インフラへの不安からICE車の販売は減退しておらず、地域ごとに差がみられる。現状、これらの新興国市場では、日本の自動車メーカーのICE車(ハイブリッド車を含む)が優位な状況だが、新興国市場で販売されているEVの約9割が中国製であり、今後の電動化の進展に伴い、競争環境に変化が生じる可能性にもIEAは言及している。
IEAは、EVへの移行は各地域で異なる速度で進んでおり、各自動車メーカーは移行期間を乗り切らねばならない、としている。その上で、EV競争力向上のため、(1)自動車市場におけるEVの普及促進政策、(2)国内バッテリー産業の立ち上げ支援、(3)競争力の高い電池化学材料の優先的採用、(4)重要鉱物サプライチェーンの多角化、(5)電力コストの削減の5つを提言した。
(注)IEA定義では、電気自動車(EV)はバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を含む。
(峯裕一朗)
(世界)
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