モロッコビジネスセミナーが大阪で開催、安価な労働力や地理的立地、FTA網が魅力
(日本、モロッコ)
大阪本部海外ビジネス推進課
2025年11月06日
モロッコのタンジェ地中海開発庁(TMSA)と三菱UFJ銀行は10月27日、大阪でモロッコビジネスセミナーを開催した(ジェトロ後援)。駐日モロッコ大使、モロッコ投資貿易促進庁(AMDIE)、同行パリ法人の担当者、住友商事の現地駐在員が登壇し、モロッコの投資環境の概況、日系企業の動向について解説した。
モロッコは北アフリカに位置する人口約3,800万の国で、国王モハメッド6世の下で工業化が進み、経済発展を遂げている。2030年のサッカーのFIFAワールドカップ(スペイン、ポルトガルと共同開催)に向けてインフラ整備が進んでいる。
ラシャッド・ブフラル駐日モロッコ大使は冒頭のあいさつで、同国は過去10年間で変容を遂げ、自動車、航空・宇宙、再エネ、輸送などの分野が著しく発展していると指摘。その上で、住友電装、フジクラ、矢崎総業などの進出日系企業による貢献に触れ、日本は共通の価値観を有する信頼できるパートナーだと評した。
ブフラル駐日モロッコ大使によるスピーチ(ジェトロ撮影)
AMDIE新興産業・その他部門長のヤシン・エル・アヤニ氏は同国の投資環境の強みとして主に次の点を挙げた。
a.政治経済の安定:モハメッド6世による安定した治世、インフレ率が2%以下で為替レートも安定
b.良好な輸送インフラ整備状況:ジブラルタル海峡に面するタンジェMED港は世界有数の貨物積み替え港、高速鉄道がタンジェ~カサブランカ間を運行、国際空港数は19で、就航都市数は130に上る
c.充実した自由貿易協定(FTA)網:EU、EFTA(欧州自由貿易連合)、英国、トルコ、中東、米国と締結、25億人規模の市場とつながる
d.若くて質の高い豊富な労働力の存在:平均年齢29.5歳、大卒者数が年18万人、うち工学系は1万9,000人
三菱UFJ銀行欧州法人営業部パリ法人営業グループの吉田拓哉次長は、日本企業から見たモロッコの優位性は欧州の近隣地域でコスト競争力の高い労働力を確保できる点であると述べた。その背景として、昨今、日系製造業が数多く進出している中東欧では人手不足と人件費上昇が課題であり、また、新型コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻で顕在化したサプライチェーン分断リスク対応から欧州に近い場所に製造拠点を構えたいニーズがあると指摘した。
住友商事カサブランカ事務所長の流田和啓氏は、駐在員の視点からモロッコの魅力と課題について解説。現在70社に上る進出日系企業にとって、同国の魅力はFTA網、廉価な人件費、公的機関による支援、良好な生活環境・気候などとした。他方、商習慣の違いや言語面の障壁、税関や行政機関による手続きの遅さや煩雑さなどが課題と述べた。
(齋藤寛)
(日本、モロッコ)
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