ボリッチ大統領、COP30首脳級会合で気候変動対策の取り組みを強調

(チリ、ブラジル)

サンティアゴ発

2025年11月10日

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は、11月6日から7日にかけて、ブラジル・ベレンで開催されたCOP30(国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議)首脳級会合に参加し、気候変動対策を計画段階から実行段階へ移行する必要性を強く訴えた。また、同国の具体的な成果と今後の方針を国際社会に示した。

ボリッチ大統領は11月6日、「われわれは科学と事実の価値を擁護できるようにならなければならない。事実にどう対処するかには議論の余地があるが、事実そのものを否定することはできない」と演説し、科学的根拠に基づいた政策の必要性を強調した。また、「ブラジルによる実施段階への移行の呼びかけを、熱意と責任をもって受け止めている」と述べ、「電動モビリティの進展により、サンティアゴは世界有数の電動バス保有都市の1つとなり、その取り組みはアタカマ州のコピアポなどチリ国内の他の都市にも広がっている」と気候変動対策の取り組みを強調した。

同6日午後には「気候と自然:森林と海洋」セッションが開催され、ボリッチ大統領は長い海岸線を持つチリの国土の広がりを踏まえて海の重要性を強調し、海洋保護の決意をあらためて示した。チリは排他的経済水域の50%以上を保護区域に指定していることにも触れた。またチリは、国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)をいち早く批准した国の1つであり、BBNJ協定が発効に必要な批准数に達したことを歓迎すると述べた。さらに、チリが過去に気候変動の影響を受け、森林火災による深刻な被害を受けてきたことを指摘し、多国間協力によりブラジルが主導する森林保護を目的とした基金「熱帯林フォーエバー・ファシリティ(TFFF)」の取り組みが始まることを強調した。

ボリッチ大統領は翌7日、「エネルギー転換」セッションに参加し、ブラジル訪問を終えた。このセッションでは、チリの再生可能エネルギー導入の進展を報告。「パリ協定の採択以降、チリは風力・太陽光発電の割合を5%から35%に引き上げた。また2015年には電力の58%が化石燃料由来だったが、2024年には30%に減少。特に石炭火力は41%から16%に減少した」と説明した。

(高橋英行)

(チリ、ブラジル)

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