米消費者、年末商戦期にクレジットカード利用拡大の見込み、カード会社は裕福層に注力

(米国)

ニューヨーク発

2025年11月27日

米国の信用情報会社トランスユニオンが11月20日に発表した、2025年第4四半期における米国の消費者動向調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)によると、米国の消費者は感謝祭の休暇シーズン中の買い物において、クレジットカード利用率が42%(2024年:38%)と前年より上昇する見込みで、借り入れ・信用を活用しながら消費者はホリデーショッピングへの支出を増やす予定だ。

ただし、消費の状況やこれを支える家計の状況は二極化している。ホリデーショッピングの見通しに関しても、1,000ドル以上支出すると回答した人が12%と2ポイント上昇したのに対し、約半数は100ドルから500ドルの間にとどまった。家計についても、高所得者層では、79%は家計が予想よりも改善あるいは想定どおりと回答したのに対し、低所得者層ではこの割合が51%にとどまった。家計が悪化していると回答した世帯のうち、77%は収入がインフレに追い付いていないと回答。調査結果でもインフレが二極化の要因となっていることが指摘されており、回答者の81%が、今後6カ月間で家計に影響を与える最大の懸念事項としてインフレを挙げた。

インフレの中でも、特に食料品の価格上昇が最も懸念されており(79%)、2024年と同様に最大の懸念事項となった。その他では、懸念度が最も大きく上昇したのは保険(前年同期比43%から47%へ上昇)と医療費(41%から45%へ上昇)だ。また、トランプ政権による国際貿易関税が家計に与える影響を懸念していると回答した者も86%に上った。

こうした家計の二極化を反映して、クレジットカードに関しても、高所得者向けサービスと低所得者向けサービスの利用状況に大きな差異が生じている。米国信用情報機関バンテージスコアによると、2025年半ば以降、特に低所得層の借り手の間で、支払期限から60日以上延滞する割合が前年比で増加しているという。また、ニューヨーク連銀の調査によると、債務不履行と見なされる90日以上の延滞率も2025年第3四半期は再び上昇傾向にある。

このように低所得世帯を中心に、経済的な逼迫や家計への負担が増大する中、クレジットカード各社は、裕福層を対象としたプレミアムカードの展開に注力している。主要カード発行会社の直近の決算報告では、消費支出の伸びが引き続き堅調であることを示しており、フィラデルフィア連邦準備銀行による大手銀行の分析によると、新規融資の大部分は信用スコアの高い借り手から発生しているという。市場調査会社JDパワーによると、高額年会費カードの利用客は、低額カードの利用者と比べて約3倍多く支出する傾向がある。また、富裕層の顧客は高い年会費を支払うことをいとわず、支払いを滞納する可能性も低いため、銀行にとっては優良な顧客層と見られる。アメリカン・エキスプレスがプラチナカードの特典を強化し、年会費を695ドルから895ドルに引き上げたところ、新規の申し込み件数が数週間で2倍に増加したという。

(注)実施時期は2025年10月1~14日。対象者は米国の成人3,000人。

(加藤翔一、樫葉さくら)

(米国)

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