ケニア、電力不足が深刻化、計画停電実施を発表

(ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピア)

ナイロビ発

2025年11月12日

ケニアのウィリアム・ルト大統領は11月4日、同国の複数箇所において午後5~10時の間、計画停電を実施することを明らかにした。実施の日時や地域などの計画の詳細は明らかにされていないが、随時、ケニア電力(Kenya power)がX(旧Twitter)上で告知している。現地紙によると、既に2024年9月からケニア西部などでは頻繁な計画停電が実施されており、不満の声があがっているという。

ルト大統領は、電力インフラが十分でなく、現在のケニア国内の総電力供給は2,300メガワット(MW)程度にとどまっていると説明。例えば、データセンターを1つ建設すると1,000MW相当の電力を消費するとし、産業全体に必要な電力を供給しようとすれば少なくとも1万MWは必要だと述べた。

現地報道によると、2025年8月にケニア国内の電力消費は2,363MWのピーク需要を記録し、10月には2,412MWにまで達したという。供給不足に対応すべく、ケニアは周辺国から電力を輸入しており、エチオピアからの電力への輸入依存率は既に11.5%を超えている(注1)。また、少量ながらウガンダと、2024年12月からはタンザニアとも電力の輸出入を開始している(注2)。2025年8月のケニアの電源構成をみると、地熱(46.0%)、水力(25.8%)、風力(13.5%)、火力(11.7%)、太陽光(2.9%)となっている(添付資料図1参照)。現地紙によると、地熱が大部分を占めるものの、新規建設には莫大(ばくだい)な採掘コストが必要で、潜在性を十分に生かせていない。また、水力もタナ川沿いの7つのダムに依存しており、老朽化と不安定な雨量が課題となっている。北部ラムでの1,050MWの石炭火力発電計画も2025年10月16日、環境・土地裁判所において許認可取得が否決された。原子力発電所の建設計画もあるが、短期的にはエチオピアからの電力輸入に依存するしかない状況だ(添付資料図2参照)。

内閣および議会の決定により、ケニア電力は既存の契約における発電者からの電力調達価格が適切でないとの指摘を受け、2018年以来、電力の新規調達契約を凍結している。ルト大統領は2025年10月13日、今後5年間で1兆シリング(約1兆1,900億円、1シリング=約1.19円)の予算を投じて1万MWの発電能力を増強する計画を発表した。このような大規模なプロジェクトを行うには、財政的な制約から、官民連携パートナーシップ(PPP)のかたちを取らざるを得ないが、現地紙は、法整備の遅れやPPPに対するケニア国民の理解が十分に得られていない、と困難さを指摘している。

(注1)2025年8月のケニアの国内電力消費10億2,034万キロワット時(kWh)に対して、エチオピアからの電力輸入は1億1,777万kWhと、総電力消費の11.5%に相当する。

(注2)2025年8月の両国との電力の輸出入は、ウガンダからの輸入が3,250万kWh、輸出が148万kWh、タンザニアからの輸入が18万kWh、輸出が410万kWh。

(佐藤丈治)

(ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピア)

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