アルゼンチン国会の中間選挙で与党の議席数増加、税制・労働改革に乗り出す

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2025年11月04日

10月26日にアルゼンチンで国会議員中間選挙が実施され、ハビエル・ミレイ大統領が率いる与党・自由前進(LLA)が全国的に最多得票率を獲得し、勝利した。今回の選挙では、上院72議席中24議席(8州が対象)、下院257議席中127議席(全24州が対象)が改選対象となった。27日付の現地紙「ラ・ナシオン(電子版)」によると、同日時点(開票率は上院98.9%、下院99.2%)の与党連合の全国平均の得票率は、上院で42.03%、下院で40.66%だった。対するペロン主義連合は、上院で28.42%、下院で31.7%にとどまった。この結果、12月10日以降の議会勢力は、下院は与党連合が118議席、野党の対抗勢力が100議席、穏健派で政府との交渉に応じる政党は39議席となる。上院では与党連合28議席、野党の対抗勢力26議席、交渉に応じる議員は18議席となる見通しだ。ペロン主義連合が上院で30議席を下回るのは1993年以来のことだ。

9月7日に実施されたブエノスアイレス州議員選挙では、アクセル・キシロフ州知事が率いるペロン主義政党のフエルサ・パトリアが得票率約47%で圧勝した。LLAの得票率を約14ポイント上回った。この結果に加えて、対ドル公式為替レートの下落や与党関係者の汚職疑惑、選挙間際にLLAの下院議員有力候補が立候補を辞退したことなどを受けて、今回の中間選挙でのLLAの勝利は難しいとされていた。予想に反するLLAの勝利には複数の要因があったとされるが、主に有権者がペロン系キルチネル主義の復権や、与党大敗後の経済情勢のさらなる悪化を恐れたことが挙げられる。また、インフレ率や貧困率などの経済指標がミレイ政権によって改善していることも評価されたようだ。さらに、同国で初めて単一投票用紙(ボレタ・ウニカ)が導入され、投票の簡素化や投票場所での不正行為が減少したことが与党に有利に働いたとの分析もある。

政府は今後、労働制度や税制、年金制度の見直しに取り組む予定だ。労働改革に優先的に取り組み、特に企業別の労使交渉の促進と、成果および生産性に基づく給与制度の構築など、労働契約法の近代化を目指す。次に取り組むのが税制改革で、付加価値税(IVA)、所得税、総売上税などの見直し、小切手税、金融取引税の撤廃が検討されている。その結果、約20の税金を変更または削減することを目指す。これらの実現後に年金改革に取り組みたい考えだ。今回の選挙の結果、与党連合の議席数は増えるが、上下両院のいずれも過半数に至らない。改革を実現するには、穏健派の他政党や州知事らと対話し、交渉をしていくことが不可避となる。ミレイ大統領は10月30日に全国24州のうち20州の知事らと面談し、関係改善に早速取り組んでいるようだ。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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