中国は業績改善、インドは好調継続、域内への米国関税の影響は限定的、ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」
(アジア、オセアニア)
調査部アジア大洋州課
2025年11月26日
ジェトロは11月26日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」を発表した。本調査は、8月19日から9月17日にかけて、アジア・オセアニア地域(20カ国・地域、注)に拠点を置く日系企業1万2,900社を対象に、調査票をオンラインで配布・回収し、5,109社から有効回答を得たもの(有効回答率39.6%)。
調査結果によれば、2025年(1~12月)の営業利益で黒字を見込む企業の割合は66.5%と、前年調査(65.8%)からほぼ横ばいだった。国・地域別でみると、中国(63.2%)は需要増のほか、生産効率の改善や人件費削減などにより4年ぶりの上昇となった。
今後の事業展開意欲について、「拡大」と回答した企業は45.0%と、前年調査(43.8%)より1.2ポイント上昇した。国・地域別でみると、インド(81.5%)が首位で、現地需要の拡大を理由に拡大意欲の上昇傾向が続いた。一方、中国(21.3%)は下落幅が縮小傾向にあるものの、依然として低下が続いた。
米国追加関税措置の影響は、米国向け輸出がある企業は3割未満と域内で限定的だが、これら企業は米国市場の需要減などにより営業利益の悪化が見込まれる。対応策として、引き続き対米輸出を維持するため、多くの企業で自社のコスト削減や取引先との価格交渉を通じて負担の吸収・転嫁を図る動きが見られた。
脱炭素化に取り組む割合は全地域で過去最高、ASEANでのデジタル活用状況は道半ば
脱炭素化への取り組みは、「取り組んでいる」割合が43.0%と、2021年度の調査開始時から12.1ポイント上昇し、過去最高を記録した。取り組んでいる理由は、各地域で「全社的に脱炭素化目標を掲げている」との声が約6~7割を占めた。
デジタル技術の活用・課題について、2026年のデジタル経済枠組み協定(DEFA、2025年10月29日記事参照)締結に向け制度整備を進めるASEANでは、進出日系企業のデジタル活用割合は52.1%で、オーストラリア、韓国、インドの6割超と比較して低かった。導入・利用にあたっての課題として、「国・地域別に異なる規制対応」や「本社主導と現場対応の両立が困難」などの声があった。
なお、本調査では、営業利益見通し、事業展開、米国追加関税措置の影響、人手不足、人権尊重の取り組み、調達・輸出、競争環境の変化、脱炭素化への取り組み、デジタル技術の活用・課題、投資環境、賃金実態を紹介している。
(注)北東アジア5カ国・地域(中国、香港、マカオ、台湾、韓国)、ASEAN9カ国(ベトナム、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、ラオス)、南西アジア4カ国(インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ)、オセアニア2カ国(オーストラリア、ニュージーランド)。
(西村公伽)
(アジア、オセアニア)
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