大きく変化する経営環境下でも海外で稼ぐ日系企業、ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)」

(世界、日本)

調査部調査企画課

2025年11月21日

ジェトロは11月20日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」の結果を発表した(添付資料参照)。同調査は、海外に進出する日系企業活動の実態を把握し、日本企業・政策担当者向けに幅広く提供することを目的に、毎年、オンラインによるアンケート形式で実施している。最新の調査は2025年8月後半から9月にかけて、海外82カ国・地域で操業する日系企業1万7,708社を対象に実施し、7,485社から有効回答を得た(有効回答率42.3%)。

「黒字」割合が2年連続で増加、拡大意欲は横ばい

2025年の営業利益見通しについて、「黒字」見込みは2年連続で増加し、66.5%となった。中東(73.8%)、南西アジア(71.7%)、中南米(70.9%)で高く、アフリカでも初めて6割を超えた。一方、対米取引が多いメキシコ、ブラジル、韓国などでは景況感が悪化した。

今後1~2年の事業展開については、46.2%が現地事業を「拡大」すると回答。コロナ禍以降全体で5割を下回る水準が続くが、製造業では、南西アジアやアフリカで事業拡大を見込む企業の割合が7割を超えた。事業拡大の理由としては、「現地市場ニーズの拡大」が最大で(67.3%)、とりわけ米国(74.5%)では前年比4.9ポイント増と増加幅が大きかった。

米国関税措置が製造業に打撃、対米輸出企業の4割が影響大

米国関税措置については、対米輸出を行う製造業の約4割が営業利益へのマイナスの影響が大きいと回答、メキシコ(58.2%)、中国(53.4%)の対米輸出企業では半数を超えた。特に自動車ではサプライチェーン全体に影響が広がり、全業種ベースで約半数が影響を受けている。こうした影響に対し、対米輸出企業は自社のコスト削減や調達の分散化などで対応している。

人手確保の状況悪化が3割強、人権尊重の取り組みは製造業を中心に広がる

人手不足は一層深刻化し、直近2年間の人材確保の状況では「悪化」(31.9%)が「改善」(7.7%)を大きく上回る。今後の事業拡大意欲の高いベトナム(48.2%)、ブラジル(40.6%)、インド(35.6%)で悪化の割合が高い。人材獲得における競合先は、多くの市場で地場企業が最大の一方、ベトナムでは中国系企業が最大となった。

人権尊重の取り組みにも進展がみられる。人権デューディリジェンス(人権DD)を実施する企業は、前回調査(2023年)から2.3ポイント増加して3割を超えた。製造業・非製造業の双方で増加がみられ、特に輸送用機器製造では21.3ポイントの大幅増となり6割を超えた。人権DDを実施した結果として、多くの企業が「社内の人権リスクの低減」(約8割)、「従業員の働きやすさの改善」(4割超)など、自社の労働環境改善や従業員のエンゲージメント向上につながる効果を挙げている。

(中村周)

(世界、日本)

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