賃金ガイドライン、低所得労働者の賃上げ勧告

(シンガポール)

シンガポール発

2025年11月17日

シンガポールの政労使代表で構成する全国賃金評議会(NWC)は11月11日、2025~2026年度(2025年12月1日~2026年11月30日)の賃金ガイドラインPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。経済の先行きが不透明な中でも、総月給(注)が2,700シンガポール・ドル(約32万1,300円、Sドル、1Sドル=約119円)以下の低所得者を対象に、前年と同じく総月給の5.5~7.5%、または105~125Sドルのいずれか高額な方への賃上げを勧告した。

NWCの賃金ガイドラインは、官民の幹部、専門職、技術者、一般社員と全ての労働者に対し、全国労働組合会議(NTUC)傘下の労働組合に所属しているかどうかにかかわらずに適用される。今回の賃金ガイドラインでは初めて、対象となる労働者の中に、配車プラットフォームの運転手など、プラットフォーム労働者も含まれることになった。

NWCは低所得者の定義について、フルタイム雇用の国民(永住権者を含む)の総月給の下位20%の水準で設定している。NWCは業績と見通しともに好調な事業主に対し、低所得者の基本給を総月給の5.5~7.5%、または105~125Sドルのいずれか高い方の上限額相当(総月給の7.5%、または125Sドルに近い額)を引き上げるよう勧告した。また、業績は良いが、見通しが不透明な事業主については、総月給の5.5~7.5%、または105~125Sドルのいずれか高い方の中間から下限額相当(5.5%~6.5%、または105Sドル~115Sドル)の基本給を引き上げるよう求めた。さらに、業績が悪かった事業主に対しては、総月給の5.5~7.5%の下限相当(5.5%に近い額)の基本給を引き上げるよう勧告した。

このほか、NWCは全ての従業員を対象に、業績と見通しともに好調な事業主に対して、業績と従業員の貢献に応じた基本給と可変給(業績に応じて変動する給与)の引き上げを求めた。業績は良いが、見通しが不透明な事業主については、基本給の引き上げを抑制したとしても、業績と従業員の貢献に見合った可変給の支給で報いるべきだとした。また、業績が低迷した事業主に対しては、経営層が見本を示すかたちで賃金の引上げを抑制するよう勧告した。

NWCは、人材省やNTUC、シンガポール国家雇用者連合(SNEF)、外国商工会議所などの代表で構成し、景気や雇用市場の動向、経済見通しなどを考慮して、その年度の賃金改定の指針となるガイドラインを毎年発表している。勧告の全文は人材省ウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に掲載されている。

(注)総月給は基本給、可変給、食事や住宅などの手当、インセンティブ、残業代を含むが、賞与と年間給与補助(AWS、13カ月目の給与)は含まれない。また、中央積立基金(CPF)の従業員の負担分を含むが、雇用主のCPF負担は含まない。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 28a149eb10ddef99