ACFTA3.0議定書に署名、デジタル、グリーン、サプライチェーン連結、標準化などでの協力盛り込む

(中国、ASEAN)

調査部中国北アジア課

2025年11月17日

中国商務部の発表によると、王文濤商務部長は10月28日、マレーシア・クアラルンプールで、ACFTA3.0アップグレード議定書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に署名した。商務部の説明によると、同議定書の交渉は2022年11月に開始され、2025年5月に完了した。議定書の署名後、中国とASEANの双方が批准手続きを進め、早期発効を目指すとされた(注1)。

議定書はデジタル経済、グリーン経済、サプライチェーンの相互連結、標準・技術法規および合格評定手続き、衛生・植物検疫措置、税関手続き・貿易円滑化、競争・消費者保護、中小企業、経済技術協力の9分野で構成している。商務部の説明によると、そのうちグリーン、デジタル、サプライチェーン、競争・消費者保護、中小企業の5分野は今回新規に盛り込んだものだ。また、商務部は、議定書では開放水準の引き上げや中小企業の発展および後発国の履行能力向上など包摂性も重視したと評価した。

デジタル経済では、電子データ送信に対する関税免除、データの越境移転の保障、個人情報保護水準に関する相互認証の模索、電子認証・電子署名の推進、インターネット詐欺対策のほか、物流やデジタルインフラの連結や電子インボイス、電子決済、電子船荷証券などの協力によるコスト削減なども盛り込んだ。デジタル認証、フィンテック、人工知能(AI)、デジタル貿易などの新分野での協力も深化させるとした。

グリーンに関しては、環境基準を保護主義の手段にしないとのコミットメントを行い、環境関連製品・サービスの貿易障壁を削減するとしたほか、グリーン貿易、グリーン投資、循環経済、サステナブルファイナンス、グリーンテック、グリーン標準、持続可能なエネルギー、デジタル化とグリーン化の共同発展の8分野で、研究開発、資金調達、生産、消費、回収の全サイクルにわたる協力を先行して実施するとした。

サプライチェーンに関しては、重要な製品・サービスを自由に流通させ、サプライチェーンの強靭(きょうじん)性と連結性を強化するとした。インフラの連結、国境検査所の効率性向上、サプライチェーンの資源配置の効率性やリスクアラート能力の向上、サプライチェーン途絶への共同対処なども盛り込んだ。

標準・技術法規・合格評定手続きでは、双方の標準(規格)策定時に相手国・地域の標準を参考にできるとしたほか、合格評定結果の相互承認の奨励や同手続きの共同策定を行い、特に新エネルギー車、電機電子機器などの分野で、標準に関する協力を先行して推進するとした。また、双方の企業に内国民待遇を付与し、標準・技術法規・合格評定手続きの策定に参加することを認めるとした。このほか、中国が立ち上げた中国ASEAN標準化協力フォーラム(注2)で双方の標準化協力の具体化を進めるとした。

(注1)商務部は11月13日の記者会見で、同部が運営するウェブサイト「中国FTAサービス網」に同議定書のテキスト(中国語版・英語版)を掲載外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたことを明らかにした。また、商務部は議定書の国内批准手続きを現在進めており、早期発効に向けて努力しているとした。

(注2)同フォーラムは、中国国家市場監督管理総局と広西チワン族自治区政府が設立した組織が主催するもの。直近では2025年8月にAI標準化によるイノベーション協力をテーマに、同自治区南寧市で開催され、中国とASEANのAI+医療の標準化協力に関するイニシアチブなどが発表された。

(小宮昇平)

(中国、ASEAN)

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