米テキサス州オースティンでジェトロの起業家育成プログラム実施
(米国)
ヒューストン発
2025年11月25日
テクノロジー分野を対象としたジェトロの起業家育成プログラム「Beyond Japan-Zero to X」が10月20日から11月7日まで、米テキサス州オースティンの「キュー・ブランチ(Q Branch」)で行われた。同プログラムでは、米国でのビジネス展開を学ぶワークショップやメンターとの1対1のミーティングなどを実施。10月22日のピッチ・ショーケース(注1)では、プログラムに参加した日本のスタートアップ6社が登壇した。
業務をデジタル化・自動化する人工知能(AI)プラットフォーム開発の「アンチェイン(UNCHAIN)」(注2)の朴善優(クリスチャン・パク)最高経営責任者(CEO)は、「シリコンバレーでは多くの投資家や起業家らに会える一方で、企業と接点を持つのが難しいと感じる。今回、現地企業との交流やPOC(概念実証)の機会を得て、AI導入の実態を学ぶことができた」と語った。また、「プロダクトドリブン(Product Driven、注3)」の文化が強い米国では、同社の「AIプロダクト+エンジニア派遣」という提供形態は、新鮮に受け止められたという。
米軍・自衛隊向けの無人船(USV)を開発する「ブルワーク・ダイナミクス(Bulwark dynamics、注4)」の共同創設者兼CEOのニャット・リュウ(Nhat Lieu)氏は、「軍民両用(デュアルユース)領域で事業展開する上で、米軍関係者とのネットワーク構築のため本コースに参加した。軍関係者からの助言や海軍出身契約担当者の参加、将軍クラスのアドバイザー参画など、事業開発に有益な成果を得た。エンドユーザーとの面談は、米国や軍のビジネスマナーを学ぶ貴重な経験だった」と語った。また、シリコンバレーと比較して、フレンドリーでアクセスしやすいコンパクトなコミュニティー環境がテキサスの魅力だという。
テキサス州では2025年第1四半期、スタートアップ企業の調達額が約29億ドルとなり、過去2年で最高額を記録した(クランチベース4月7日付)。特に、同州オースティンをベースとする企業2社(注5)が大型資金を調達した。テキサス州のスタートアップにおける投資ラウンド数は減少傾向にあるものの、少数の企業が巨額の資金を集める流れが強まっており、第2四半期と第3四半期でも調達額は堅調に推移している。
ピッチイベントであいさつするQ Branchの創立者兼CEOのマーク・セルバンテス氏(ジェトロ撮影)
(注1)10月20日から24日まで、街を上げたテック系の投資家や起業家らが集まるイベント「オースティン・テック・ウイーク(Austin Tech Week)」の一環として開催。
(注2)同社のAIプラットフォーム「ニューロン(NEURON)」は、企業のワークフローを構造化し、AIが業務の仕組みを理解することで、AI実装をより効果的にし、生産性向上を実現する。自然言語で指示を入力するだけで、AIが業務プロセスをデジタル化・自動化でき、専門的なプログラミング知識は不要。
(注3)経営戦略の核にプロダクトを据え、その価値と機能性を最大限に高めることに注力し、ユーザーの利用を通じて自然な形で利用や売上の成長を促すアプローチ。
(注4)GPSの妨害など紛争下の厳しい環境でも、米軍・自衛隊の物資輸送をサポートする無人船(USV)を開発する、米国発防衛スタートアップ。
(注5)自律型海洋船を開発するサロニック(Saronic)がシリーズAで6億ドルを調達し、IT管理プラットフォームのニンジャワン(NinjaOne)が5億ドルを調達。
(笹川佐季、キリアン知佳)
(米国)
ビジネス短信 26f8f8e813593bf7




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