米上院がつなぎ予算の重要ハードルをクリア、政府再開に一歩前進

(米国)

ニューヨーク発

2025年11月11日

米国では10月1日から連邦政府の一部閉鎖に突入していたが、連邦議会上院は11月9日、つなぎ予算を含む法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)について、フィリバスター(議事妨害)の回避に必要な票数60票を確保して討議終結(クローチャー)にこぎつけ、事実上、通過させることに成功した。民主党からは、共和党と超党派で協議を続けていた5人の議員が新たに賛成に回った。賛成票を投じたジーン・シャヒーン上院議員(民主党、ニューハンプシャー州)は、政府閉鎖が継続し、経済的影響が拡大する中で、「両党の膠着(こうちゃく)状態がこのまま続いたとしても、共和党が法案に〔民主党が求めている医療保険適正化法(オバマケア)に基づく税額控除の延長などの〕文言を追加することに同意しないことが明らかとなった」と述べた(議会専門紙「ザ・ヒル」11月9日)。

これまで提案されていたつなぎ予算法案からの修正点は、(1)つなぎ予算期限の2026年1月30日までの延長(これまでは11月20日まで)、(2)退役軍人・軍事建設、農業、立法関連の3歳出法案の承認、(3)政府閉鎖期間中に解雇された職員の復帰、その間の給与の支払いおよび2026年1月30日までの新たな解雇の禁止、などだ。

民主党側が求めているオバマケア税額控除の延長は、法案には含まれていないものの、ジョン・スーン上院多数党院内総務(共和党、サウスダコタ州)は、12月に延長に関して採決を行うことを約束した。もっとも、約束されたのは採決のみであり、オバマケア税額控除の延長に関する超党派での議論の推進や法案成立に向けた協力などについては一切触れられていない。加えて、採決の実施が約束されているのは上院のみであり、下院はこれにコミットしていない。さらに、ドナルド・トランプ大統領は自身のSNSで、オバマケアは保険会社を大もうけさせる「詐欺」であり、個人の口座に直接資金を振り込むべきとの考えを示しており、先行きは依然として不透明な状態だ。

上院はひとまず重要なステップを前進させたものの、政府閉鎖が解除されるまでにはしばらく時間を要するとみられている。民主党の中には、11月の地方選での勝利(2025年11月6日記事参照)にもかかわらず、オバマケア税額控除の延長の確約がない状態で一部の議員が共和党と合意したことに強く反発する者も多く、上院での可決にはまだ数日かかる可能性がある。また、上院可決後に下院を再招集して採決することになるが、現在休会中の下院の招集には36時間の再招集期間が必要となる。下院は9月以降、休会が続いており、下院共和党の意見が十分に集約できているわけではない。このため、今回の上院の合意が十分な支持を獲得できるかはまだ分からない。政府の再開は早くとも週後半となりそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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