7月憲章の国民投票は2026年の総選挙と同日実施、11月17日には前首相へ判決言い渡しの見通し
(バングラデシュ)
ダッカ発
2025年11月14日
バングラデシュ暫定政権のムハンマド・ユヌス首席顧問は11月13日、国民に向けてテレビ演説を行った。
ユヌス首席顧問はまず、2024年8月に起きた政変を経て発足した暫定政権は、3つの主要な責務を託されたと述べ、「虐殺を行った責任者を法の下に裁くこと」「透明性があり効果的な民主主義体制を築くために必要な改革を実施すること」「自由で公正な選挙を通じて選ばれた政府へ権力を移譲すること」であるとした。同顧問は暫定政権が行った改革には顕著な進展が見られると主張し、司法の独立性や司法行政の改善、財政の透明性向上、制度を担う組織の能力向上、デジタル化、腐敗防止の取り組みが強化されたと述べた。
政変を契機に暫定政権と政党間で合意を図る改革の枠組み「7月憲章」に関し、いくつかの分野でささいな相違はみられるものの、30の重要な改革案について合意が形成されたとの認識を示した。暫定政権は11月13日の閣議で「7月憲章実施令」を承認し、官報への掲載手続き中であるという。本令には、7月憲章の改革案に関する国民投票の実施が記されており、国民投票は2026年2月上旬に行われる総選挙と同日に実施すると発表した。
国民投票では、次の4点について国民の賛否を問うと明らかにした。
- 選挙期間中に、暫定(ケアテーカー)政府、選挙管理委員会などの機関が7月憲章に規定された手続きに従って設置される。
- 現在一院制の議会を二院制とする。新設される上院は比例代表制で選出された100人の議員で構成され、憲法改正には上院の過半数の承認が必要となる。
- 7月憲章において政党間で合意した改革である、女性国会議員の増加、野党からの国会副議長や委員長の選出、大統領の権限拡大、基本的人権の保護、司法の独立、地方自治の強化は、総選挙で勝利した政党に対し拘束力を有するものとなる。
- 7月憲章に明記されているそのほかの改革は、各政党の公約に沿って実施される。
国民の過半数が賛成票を投じた場合、新しく選出された国会議員を評議員とする憲法改正評議会が設置される。評議員は180公務日以内に憲法改正を行い、その後30公務日以内に比例代表制による選挙結果に基づき上院が設置される。また、7月憲章も「7月憲章実施令」に明記しているとおり、正式に憲法に組み込まれることになる。
ユヌス首席顧問は、2009年から15年間にわたって政権を率い、インドへ逃れたシェイク・ハシナ前首相に関して、政変中の虐殺などの「人道の罪」で訴追しており、バングラデシュ国際犯罪法廷(ICTB)がまもなく最初の判決を下すとした。ICTBは同日、ハシナ前首相と元内務相、元警察庁長官の3人に対する判決を2025年11月17日に言い渡すと発表しており、注目が集まる。3人は政変前の市民と当局の衝突に関連して大きく5つの罪に問われている。17日は裁判所周辺を中心に、ダッカ市内の警備体制の強化が予想される。
(片岡一生)
(バングラデシュ)
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