ウクライナ、フランス製戦闘機「ラファール」100機購入へ

(フランス、ウクライナ、米国、EU、英国)

パリ発

2025年11月20日

フランスのエマニュエル・マクロン大統領とウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は11月17日、ウクライナによるフランス製戦闘機「ラファール」100機の将来的な購入に向けた意向書に署名した。外国によるラファール発注としては過去最大規模となる。マクロン大統領は同日、自身のX(旧Twitter)上で「歴史的な日だ」とコメントした。

ゼレンスキー大統領も同日、自身のXで「フランスとウクライナの戦略的パートナーシップが新たな段階に入った」と強調した。さらに、フランスから高性能レーダーや新型防空システムSAMP/T、空対空ミサイル、誘導爆弾の供給を受けること、年内に追加の軍事支援パッケージが届く見通しも明らかにした。両国は防衛産業協力の深化にも合意し、「ウクライナ防衛産業の強化につながる」とした。

契約の詳細についての発表はなかった。フランスのカトリーヌ・ボートラン軍事相は11月18日、公営ラジオ局「フランスアンテール」で、同契約の詳細はまだ不透明で、ウクライナとラファールを製造するダッソーの間で契約についての交渉が行われる予定だと説明した。また、今回の合意は「10年という時間軸に沿っている」とも指摘。「契約にはドローンや爆弾など、ウクライナがごく短期で購入する装備も含まれている」とし、「短期と長期の両面を持つ合意だ」と述べた。

フランスのジャン=ノエル・バロ外相は同18日、公営テレビ「フランス2」のインタビュー番組に出演し、両国の合意により「1991年に独立してから初めて、ウクライナが自国を防衛し、新たな侵略を抑止するための航空戦力を持つことになる点で歴史的だ」と評価した。さらに、「ラファール1機の製造は約7,000人の雇用を生み出す。100機の販売契約は、フランスにとって防衛産業の維持・強化につながる」と述べ、防衛協力が双方の利益に資することを強調した。

マクロン大統領のウクライナ政策

マクロン大統領は、今回の合意を含め、対ウクライナ支援を長期戦略として位置づけている。2024年2月には、ゼレンスキー大統領と最長10年間の安全保障協力協定を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(大統領府リリース、フランス語)し、軍事装備供与、共同生産の開発など防衛産業における協力、訓練支援の継続を約束した。2025年9月には、停戦後のウクライナに国際平和維持部隊を派遣する「有志連合」構想を提唱外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(同リリース、フランス語)。米国の支援減少を背景に、欧州の防衛力強化と自立を訴え、フランス・英国による核抑止における協力を深化させている。国防省が2025年9月に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(フランス語)によれば、フランスの軍事支援総額は2022年2月24日から2024年12月31日までの間に約59億ユーロと見積もられている。

(山崎あき)

(フランス、ウクライナ、米国、EU、英国)

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