「アランカダ投資フォーラム2025」開催、フィリピンの投資環境課題を議論
(フィリピン)
マニラ発
2025年10月17日
フィリピン合同外国商工会議所(JFC、注1)は9月25~26日の2日間、マニラ首都圏パサイ市で「アランカダ投資フォーラム2025」を開催した。フィリピンの経済目標達成の加速を目的とし、アグリビジネス、クリエイティブ産業、ITビジネスプロセスマネジメント(IT-BPM)産業(注2)、インフラ、鉱業、製造業、観光の7つの主要セクターにおける改革が議論された。
アランカダ投資フォーラムの様子(ジェトロ撮影)
初日には、フィリピン米国商工会議所のエブ・ヒンチクリフ事務局長が、70以上の提言を含む「アランカダ政策書(注3)」を発表した。
また、フィリピンの投資環境とビジネス環境向上をテーマとしたパネルディスカッションも開催された。進出日系企業が多く集積する工業団地の1つであるファースト・フィリピン・インダストリアル・パーク(FPIP)対外関係担当責任者のリッキー・カランダング氏は、同セッションで、外国企業の意見として「フィリピン市場への参入は容易だが、実際に進出すると事業運営が難しくなる」と紹介した。また、フィリピン反レッドテープ機関(ARTA、注4)ディレクターのマルビダ・マルビダ氏は、「世界銀行『2024年版ビジネスレディ(B-READY)レポート」では、フィリピンは規制枠組みで高い評価を得ているが、事業効率では低評価である。これは、政策を効率的に実施できていないことを示している」と指摘した。非効率的な行政手続きや物流コストなども課題として挙げられた。また、解決策として、デジタル化の推進による情報収集の利便性向上などが議論され、これに対してFPIPのカランダング氏は「コストの予測可能性や透明性、政策や法規制の一貫性があれば、投資家はより前向きに投資を行う」と付け加えた。
初日午後の分科会では、「農業、水、鉱業」「製造業、インフラ、物流」「デジタル経済、クリエイティブ産業、観光」の3テーマが議論され、官民連携(PPP)の強化が重要視された。
2日目は、フィリピン貿易産業省投資委員会(BOI)、フィリピン経済特区庁(PEZA)などの投資促進機関に加え、フィリピンITビジネスプロセス協会(IBPAP)や地場財閥のアボイティス・インフラキャピタルなどの業界関係者がセッションに登壇した。会場では、フィリピン科学技術省(DOST)が支援するスタートアップ企業などの民間セクターや政府機関がブース出展し、企業間および企業と政府間のネットワーキングが行われた。
ブース出展の様子(ジェトロ撮影)
(注1)JFCとは、日本、米国、カナダ、韓国の商工会議所とフィリピン多国籍企業・地域本部協会(PIMAR)で構成される組織のこと。
(注2)IT-BPMとは、ITを活用した業務委託サービス全般を指し、さまざまなサービス分野を包含する。その範囲はコールセンター、医療情報管理、バックオフィス業務からソフトウエアサービス、ゲーム開発、アニメーション制作まで多岐に及ぶ。
(注3)2010年以降、JFCがフィリピン経済成長促進のためにまとめた政策書。これまでに400回以上の改定を経ており、今回は最新版にあたる。
(注4)ARTAは2018年、共和国法11032号によって設立された大統領府直轄機関。政府機関のコンプライアンス監視、デジタル化の促進、過剰な官僚主義に関する国民からの苦情対応などを行っている。
(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)
(フィリピン)
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