EFポリマー、シリーズB資金調達を完了、ジェトロ支援でグローバル展開加速
(日本、米国)
イノベーション部スタートアップ課
2025年10月14日
作物残りかすから完全有機・生分解性を有する超吸水性ポリマーを製造・販売するEFポリマー(本社:沖縄県恩納村)は9月30日、シリーズBラウンド(注1)のセカンドクローズ(注2)として第三者割当増資を実施し、資金調達を完了
した。新規・既存投資家14社が参加し、ファーストクローズと合わせて調達額は総額26億3,000万円に達した。
同社は、創業者で最高経営責任者(CEO)のナラヤン・ラル・ガルジャール氏が沖縄科学技術大学院大学(OIST)の実施したスタートアップアクセラレータープログラムに参加したことをきっかけに誕生した。ガルジャール氏はインドの農家出身で、水不足に苦しむ父の姿を契機に、研究を始めた。
創業者兼CEOのガルジャール氏(EFポリマー提供)
同社はオレンジやバナナの皮など、これまで廃棄されていた農作物の残りかすをアップサイクル(注3)し、100%天然素材の超吸水性ポリマー「EFポリマー」を開発・製造・販売している。EFポリマーを土壌に混ぜることで、自重の約50倍の水を保持し、約40%の節水と20%の肥料削減を実現するという。EFポリマーの農業資材としての活用に加え、日用品や化粧品、医療品などへの応用も進めることで、水不足を中心とした環境課題の解決を目指す(ジェトロによる2024年1月9日公開インタビュー参照)。
製品(EFポリマー提供)
同社は、ジェトロが2024年度に実施した「Harvest Horizons - Agri/Foodtech to North America -」に参加した。同プログラムは、米国カリフォルニア州に拠点を置くベンチャーキャピタルのSVGベンチャーズが運営するアクセラレーター「スライブ(THRIVE)」と共同で実施された。THRIVEはアグリ・フードテック系スタートアップを中心に、100社以上への投資を行い、海外大手企業とのネットワークも有する。同プログラムでEFポリマーは、米国で開催されたスライブ・グローバル・インパクト・サミットに参加し、100カ国から1,000社超が参加するピッチコンテストで総合優勝を果たした。今回のセカンドクローズでは、SVGベンチャーズからの投資も獲得した。
ピッチ総合優勝した際の授賞式(EFポリマー提供)
ガルジャール氏は「ジェトロの支援を基盤にグローバル展開を加速している。現在は6地域で製品を販売し、20カ国以上で概念実証(PoC)を実施している」と述べた上で、「農業分野に加え、化粧品や日用品など新たな応用分野にも展開しており、今回のシリーズB資金調達を通じて研究開発・国際事業を一層強化し、持続可能な農業の実現を目指す」と意気込みを示した。
(注1)投資家が企業に投資する段階で、シードステージから今後の成長が見込まれる段階の最初の本格的投資ラウンドを「シリーズA」とし、追加出資の都度「B」「C」とアルファベット順で表現される。
(注2)資金調達ラウンドで、1回目の資金調達が完了することをファーストクローズとし、資金調達が完了するたび「セカンドクローズ」「サードクローズ」と英語序数で表現される。
(注3)廃棄予定のものに付加価値を与え、本来の製品よりも価値を高めて再生・再利用すること。
(鈴木七海)
(日本、米国)
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