ムンバイ・メトロ3号線が全線開通、南北移動が大幅に効率化

(インド)

ムンバイ発

2025年10月17日

インド西部の経済都市ムンバイで10月8日、メトロ3号線(Aqua Line、全長33.5キロ、全27駅)が全線開通した。南端のコラバ地区から北部のシープズ地区までを結ぶこの路線は、ムンバイで初めて全線が地下を走るメトロ路線で、建設には日本の円借款が活用された。2017年の着工から、8年を経ての完成となった。

ナレンドラ・モディ首相が同日の開通式典に出席し、メトロ3号線が通勤時間の短縮や移動の利便性向上につながると述べた上で、「この地下を走るメトロは、発展するインドを象徴する存在だ」と語った。運営はムンバイ・メトロ・レール社(Mumbai Metro Rail Corporation Limited:MMRCL)が担う。一部区間を先行開業していたが、今回は最終区間のアチャリヤ・アトレ・チョーク~カフ・パレード間の開通により、全線の営業運転が始まった。総事業費は約3,727億ルピー(約6,336億円、1ルピー=約1.7円)とされ、全線開通により南北移動の所要時間は従来の地上交通による約2時間から、45分程度に短縮される見込みだ。

ムンバイは半島状の地形的制約により、市街地は南北方向に細長く発展している。このため、通勤に伴う人の流れが一方向に集中し、通勤時間帯の南北方向の道路渋滞と郊外鉄道の過密運行が長年の課題だった。3号線はこれらの混雑緩和を主目的として計画され、地下経路で主要商業地やオフィス街を結ぶことで、地上交通の負担軽減が期待される。また、チャトラパティ・シバージー・マハラージ国際空港とも直結しており、空港から市中心部や南部の観光拠点へのアクセスが改善した。コラバ地区のインド門やタージ・マハル・パレス・ホテルなど主要観光地と空港を一本で結ぶことで、観光客の移動利便性も一段と高まった。

写真 新たに開業したCSMTメトロ駅の出入り口(ジェトロ撮影)

新たに開業したCSMTメトロ駅の出入り口(ジェトロ撮影)

写真 新たに開業したCSMTメトロ駅の改札口(ジェトロ撮影)

新たに開業したCSMTメトロ駅の改札口(ジェトロ撮影)

さらに、同日にはモビリティーアプリ「Mumbai One」が正式にリリースされた。利用者は同アプリを通じて、これまで別々だったメトロやバス、モノレールなど複数の交通手段のチケット購入や決済を一元的に行うことができるようにした点が特徴だ。

沿線では駅周辺の商業開発や再開発の動きも報じられており、利便性の向上を背景に、不動産投資や事業開発の活発化が見込まれる(「ヒンドゥスタン・タイムズ」紙10月11日)。一方で、路線間の乗り換えの動線や運賃体系の統一など、接続性の面では課題も残る。今後は既存のメトロ路線や郊外鉄道、バス網との連携を強化し、利用しやすい移動環境を整備できるかが焦点となる。

(篠田正大)

(インド)

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