ペナン州が半導体投資セミナーを大阪で開催、AIチップ開発の地場企業も登壇

(マレーシア)

調査部アジア大洋州課

2025年10月03日

マレーシアのペナン州政府および同州の投資誘致機関インベスト・ペナンは9月24日、関西・大阪万博のマレーシアパビリオンにおいて「ペナン:東南アジアのイノベーション経済を拓(ひら)くゲートウェイ」を開催した。ペナン州のチョー・コン・ヨー首相、インベスト・ペナンのダト・ロー・リー・リアンCEO(最高経営責任者)のほか、集積回路(IC)設計を手掛ける地場企業が登壇した。

ペナン州のチョー首相は開会あいさつで、「ペナン州は、多国籍企業350社、中小企業6,500社、デジタル〔マレーシア・デジタル(MD)ステータス〕企業200社以上が集積する一大経済圏だ」と紹介した。日本との関係では、2020年から2025年上半期にかけて日本から同州への投資額は14億リンギ(約490億円、1リンギ=約35円)にのぼり、日本と同州の貿易額も2024年に351億リンギとトップ10に入る主要貿易相手国だという。日本は最も緊密なパートナーの1つであり、デジタルやイノベーションなどで日本との連携に期待を示した。同州は、2024年に発表した「ペナン・シリコン・デザイン@5KM」を通じて、人材育成やインキュベーションスペースなどを整備し、包括的なIC設計エコシステムの構築を目指している(2024年10月1日記事参照)。

インベスト・ペナンのローCEOは、同州に後工程を中心とした電気電子産業と医療機器産業が集積すると紹介。中でも、電気電子製品の輸出額は、2024年に同州が3,580億リンギと、マレーシア全体の輸出の6割を占めたという。電気・電子産業では半導体IDM(垂直統合型メーカー)から、ファブレス、システム、EMS、材料・サブシステム、モジュール・部品まで多様な分野でサプライチェーンが構築されている。投資環境上の強みとして、産業集積に加え、自然災害がないこと、整備されたインフラ、英語を話すエンジニアの確保のしやすさ、知的財産関連の法整備が進んでいることを挙げた。

写真 ペナン州のチョー首相(左)とインベスト・ペナンのローCEO(右)(ともにジェトロ撮影)

ペナン州のチョー首相(左)とインベスト・ペナンのローCEO(右)(ともにジェトロ撮影)

同セミナーにはIC設計企業4社が登壇し、専門性や成功事例、技術開発の状況を紹介した。

  • オップスター(OPPSTAR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:アナログIC、ミックスド・シグナルICおよびデジタルIP/特定用途向け集積回路(ASIC)/システムオンチップ(SoC)を開発。ICの開発・設計だけでなくASIC/SoCのフルターンキーサービス(注)を提供。
  • シリコン・エックス(Silicon X)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:自動車、人工知能(AI)、データセンター、ヘルスケア、産業オートメーションなど向けに、国産FPGA(製造後に設計情報が自由に書き換えられる)チップを開発中。
  • スカイチップ(SkyeChip)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:ディープラーニングなどAIおよび高性能コンピューティング向けのシリコンIPおよびカスタムASIC/SoCソリューションを提供。
  • テナシック・テクノロジー(Tenasic Technology)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:情報通信(IoT)、エッジコンピューティング、クライアントデバイス、データセンター向けにカスタムASICやSoC、IP、ソフトウエアを開発。

これらのIC設計企業では、AI需要の拡大を見据えたチップ開発の動きも見られる。スカイチップは8月25日、マレーシアで初めての国産AIチップ「MARS1000」を開発・設計したと発表した。7ナノメートルプロセスで製造した初のスマートIoTチップとなる。また、オップスターも9月2日、台湾のEMS大手の英業達(インベンテック)と、次世代のAI処理チップを共同開発することを発表している(ザ・エッジ9月2日)。

(注)ICの設計から試作、評価・解析、量産までの全工程に対応するサービスを指す。

(山口あづ希)

(マレーシア)

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