ポルトガル統一地方選挙で、中道右派の与党・PSDが勝利
(ポルトガル)
マドリード発
2025年10月29日
ポルトガルでは10月12日、市長を選ぶ統一地方選挙(市・区議会選挙)が行われた。投票率は59.26%で、前回(53.65%)を上回った。中道右派の与党・社会民主党(PSD)が単独、あるいは他党との連立により、全308自治体のうち最も多い136自治体(前回113)で市長が当選し、最大野党の社会党(PS)は127(前回149)を獲得した(添付資料表参照)。事前の世論調査で互角との結果が出ていた首都リスボン市や、第2の都市ポルト市でもPSDが勝利した。PSD党首のルイス・モンテネグロ首相は5大自治体で勝利を収め、ポルトガル地方自治体協会(ANMP)、全国協区協会(ANAFRE)への協力を強めた。過去10年間、PSの政治的優位の根本要因だった大都市圏での勝利を獲得した。
リスボン市では9月、人気観光スポットのグロリア・ケーブルカーの鋼鉄製ケーブル切断事故で16人の死者を出したことにより、責任を追及されていた与党PSDのカルロス・モエダス現リスボン市長の去就が問われていたが、結果は多数の獲得には至らなかったものの、得票率42%とそれに迫る勢いで再選を果たしたことにより、党内での地位を固めた。ポルト市では3期務めたPSから、PSDのペドロ・ドゥアルテ氏が約2,000票の僅差で勝利した。国政での躍進が目覚ましい極右のシェーガ党は3市で勝利を収めるにとどまったが、得票率は11.86%となり、前回4.16%の約3倍となった。
現地紙「エクスプレッソ」(10月17日付)は、今回の選挙は国の政治情勢における3つの重要な変化を確固たるものにしたと報じた。それは、1.シェーガ党の台頭、2.都市部で左派の存在感の劇的な低下、3.将来の首相候補とも目されるモエダス・リスボン市長の勢いが一時的なものではなく、構造的な要因によるものという3点だ。シェーガ党は国政議会選挙で獲得した134万票には遠く及ばなかったが、敗北と考えるのは大きな間違いで、2021年と比較すると得票率、得票数ともに3倍に増加したことは同党の地方での存在感の高まりを示している。もう1つの構造的変化は、特に沿岸部を中心とした大都市圏で左派や中道左派の急激な衰退だ。PSがリスボン、ポルト、シントラ、カスカイス、ガイアで勝利を逃したことがそれを象徴している。左派は、安全保障などこれら地域の住民にとって最も物議を醸す問題に対処できないだけでなく、住宅危機を招いた責任があるとみなされているにもかかわらず、高齢者問題にのみ焦点を当て、若年層の支持を失った。
(小野恵美)
(ポルトガル)
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