オーストラリアの脱炭素企業、米国SAF企業と基本合意、国内初の商業規模SAF生産へ前進
(オーストラリア、米国、ニュージーランド)
シドニー発
2025年10月29日
持続可能な航空燃料(SAF)の開発・製造を行う米国企業XCF Global(XCF)は10月23日、オーストラリアの企業New Rise Australia Pty.Ltd.(NRA)との間で基本合意に達し、オーストラリア全域でのSAF製造施設開発を加速させることを発表した。NRAは輸送業界の脱炭素化を支援する同国企業Continual Renewable Ventures Pty.Ltd.の子会社として設立され、XCFとの協業を目的としている。
この基本合意により、NRAはXCFが持つSAF製造施設の設計手法や関連するノウハウを独占的に利用できる15年間のライセンスを取得し、その間に少なくともオーストラリアで3つのSAF製造施設を開発・運営する権利が与えられる。XCFは、拡張可能性があるモジュール式のSAF製造施設の設計(注1)に強みを持ち、パートナー企業への技術供与を通じてグローバル戦略を推進している。両社は今後、慣例的なデューディリジェンスや規制審査を経て、60日以内に正式なライセンス契約を締結する見込みとなっている。
オーストラリアは菜種やソルガム、サトウキビ、獣脂など、SAFの原料供給の面で優位性があるとされており、近年は複数の企業が原料供給、またはバイオ燃料生産施設への投資計画を発表している。2025年9月には同国連邦政府がSAFを含む低炭素液体燃料(LCLF、注2)の生産促進に向け、今後10年間で総額11億オーストラリア・ドル(約1,100億円、豪ドル、1豪ドル=約100円)を投資する方針を示した。また、隣国のニュージーランドは同時期に初の国家航空行動計画を公表しており、SAF利用促進に向けた地域戦略の構築に、オーストラリアとの連携を主要な施策として位置づけている。
(注1)標準化された機構(モジュール)を組み合わせて全体を構成する方式。部品ごとの再利用や交換が容易になるため、柔軟性が高くコストを抑えられる。
(注2)バイオマス資源を活用したバイオマス燃料、再エネ由来の水素と回収した二酸化炭素(CO2)から製造する合成燃料など、従来の液体燃料と比べて炭素排出の少ない燃料を指す。
(渡部卓人)
(オーストラリア、米国、ニュージーランド)
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