外国出身発明者による特許出願、約20年で3倍に、高度人材の移民がドイツのイノベーションに貢献

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2025年10月31日

ドイツのケルン経済研究所(IW)は10月13日、外国にルーツを持つ発明者による特許出願が国内で急増しているとする分析結果を発表した(ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。2022年には、ドイツで出願された特許の14%が外国出身の発明者によるもので、2000年の4.9%から約3倍に増加した。

本調査では、IWが独自に構築した特許データベースを活用。1994年以降のドイツ国内および国際的な特許出願を対象に、発明者の氏名情報から出身地域を推定する「ファーストネーム・モジュール」を用いて分析を行った。約4万5,000件の名前を、性別および24の言語圏に分類することで、発明者のルーツを高い確度で特定している。

地域別では、東欧・南東欧言語圏の出身者が全体の約3%と最大の割合を占め、南欧・ラテンアメリカ言語圏、アラブ・トルコ言語圏などがそれぞれ約2%で続く。中でもインド出身者の伸びが著しく、2000年から2022年にかけて特許出願件数が12倍に増加し、全体の1.2%を占めるまでになった。

IWの分析によれば、インド人材の活躍の背景には、ドイツ政府が2012年に開始した外国人高度人材誘致プログラム「メイク・イット・イン・ジャーマニー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の影響があるとされている。同プログラムによる情報発信や、在外ドイツ商工会議所、ドイツ学術交流会(DAAD)、ゲーテ・インスティトゥートなど現地機関との連携が奏功し、技術系職種でのインド人就業者数は2012年以降約8倍に増加。発明者の増加は、こうした戦略的取り組みの成果と位置づけられている。

また、外国語圏出身者のうち、女性発明者が占める割合は8.5%となり、ドイツ語圏出身者のうち女性発明者が占める割合の2倍だ。IWは、出身国における理工系(MINT)分野(注)への進学傾向が背景にあると分析している。

IWは、ドイツが今後も高学歴かつ若年層の多い国々と連携し、国際的な人材獲得競争で優位性を保つには、迅速な手続きと開かれた社会環境が不可欠だと指摘している。

(注)ドイツでは数学、情報科学、自然科学、技術分野を総称して、それぞれの頭文字をとりMINTと呼ぶ。

(吉森晃、佐藤吉信)

(ドイツ)

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