ケレタロ州にメキシコ初のグリーン水素製造施設が開設

(メキシコ)

調査部米州課

2025年10月10日

メキシコ中部のケレタロ州で10月8日、国内で初の水素製造施設が開設された。同施設は、ドイツの医療器具メーカーのゲレズハイマーのガラス容器工場内に設置され、産業用ガスの製造などを行う地場企業のクリオインフラが建設を手掛けた。風力などの再生可能エネルギーを活用した電解装置で、二酸化炭素(CO2)を排出せずに水素を製造する。ケレタロ州政府のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同プロジェクトへの投資額は1億ペソ(約8億円、1ペソ=約8円)に上る。生産したグリーン水素の用途の詳細は明らかになっていないが、ガラス製造での水素の利用方法としては、溶解炉の熱源としての利用などが考えられる。

開設式典にはケレタロ州持続可能開発局(SEDESU)のマルコ・アントニオ・デル・プレテ局長も出席し、同施設の導入によってゲレズハイマー社が排出する温室効果ガス(GHG)を年間100トン削減できると紹介した。また、「われわれは投資や雇用の拡大を促進しているが、それが資源の保護と両立することを目指している」と述べ、ケレタロ州政府としてもグリーン水素の活用を後押しする姿勢を示した。

クリオインフラのバヒオ地区副責任者のフェルナンド・トレホ・アルバレス氏は「この施設の稼働により、排出量の削減とクリーンエネルギーの多様化に貢献できるだけでなく、ケレタロ州やメキシコ全体でより多くの企業がグリーン水素に取り組むに当たっての前例となる。よりクリーンな未来を築く必要性を強く認識しており、ゲレズハイマーとともに、今日その実現に向けた大きな一歩を踏み出した」と述べた。

メキシコは、豊富な再生可能エネルギー資源を背景に、クリーン水素製造のポテンシャルが高いものの、オフテイカーと呼ばれる水素の利用者の確保や、政策的支援の不足などが課題として指摘されてきた(2024年11月14日付地域・分析レポート参照)。今回のプロジェクトを契機に、メキシコ国内での水素バリューチェーン構築の機運が高まることが期待される。

(加藤遥平)

(メキシコ)

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