インドの肥満率が急増、政府も健康増進に向けた取り組みを推進

(インド)

調査部アジア大洋州課

2025年10月09日

中国を2023年に抜いて世界一の人口大国となったインドは、深刻な肥満問題に直面している。国連児童基金(UNICEF)が2025年9月にリリースした報告書「フィーディング・プロフィット」では、世界的な肥満危機の実態に関する傾向を明らかにしている。また、「インドなどの低・中所得国からの症例数が急増している」とも報告しており、増加抑制のための予防措置を講じる必要があると述べている。

インドの全国家族健康調査(NFHS)のデータによると、国内における肥満症例が急増していることが分かる。同調査の第3回(2005~2006年)と第5回(2019~2021年)を比較すると、男性の肥満率(BMI:25%以上の割合)は9.3%から22.9%(13.6ポイント増加)、女性は12.6%から24.0%(11.4ポイント増加)と男女ともに約2倍に肥満率が増加している。

インド政府も、肥満問題への対策を講じている。インド保健・家庭福祉省は、2025年8月に地域に根差した健康増進・啓発プログラムの推進を発表した。具体的には、全国に存在する約18万カ所の保健センターにおいて、政府が導入した心疾患、糖尿病など非感染性疾患予防・管理を目的とした「NP-NCDプログラム」による集団スクリーニングと早期診断を実施して、過体重と肥満の特定・管理を進める。また、インド食品安全基準局(FSSAI)は、肥満や糖尿病といった生活習慣病の予防を目的とした取り組み「イート・ライト・インディア(注1)」を通じた健康的な食生活を推進している。加えて、青年・スポーツ省は、国民の運動習慣を推進する取り組み「フィット・インディア・ムーブメント(注2)」を通じて健康増進を呼びかけている。

(注1)安全に食べよう(Eat Safe)、健康的に食べよう(Eat Healthy)、持続可能なかたちで食べよう(Eat Sustainable)の3つの柱をもとに、2018年にFSSAI主導で開始された全国的な健康促進キャンペーン。

(注2)国民の健康意識と運動習慣を高めるために、ナレンドラ・モディ首相が2019年に発表した全国的なキャンペーン。

(野本直希)

(インド)

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