メキシコ国内空港でのウーバー利用、連邦裁判所と政府で見解対立
(メキシコ)
メキシコ発
2025年10月31日
メキシコにおける配車サービス大手ウーバー(Uber)の空港での営業を巡り、司法と政府の見解が対立する事態となっている。
連邦裁判所(行政管轄第13地区裁判所)が10月27日、ウーバーのメキシコ国内空港での営業活動に対して、当局(空港、国家警備隊など)による妨害行為を禁じる差し止め命令を下し、ウーバーが空港で営業活動ができるようになったと、現地各紙で報じられた。しかし、10月29日にインフラ通信運輸省(SICT)はこれを公式に否定する声明を発表 した。SICTは、今回の差し止め命令はあくまで当局の恣意(しい)的な取り締まりへの対処として出されたものと説明。空港での旅客サービスにはSICT発行の連邦許可が必須であり、差し止め命令によって、ウーバーによる旅客サービスの提供が許可されたわけではないと主張した。
した。SICTは、今回の差し止め命令はあくまで当局の恣意(しい)的な取り締まりへの対処として出されたものと説明。空港での旅客サービスにはSICT発行の連邦許可が必須であり、差し止め命令によって、ウーバーによる旅客サービスの提供が許可されたわけではないと主張した。
メキシコの空港は連邦管理区域に位置づけられ、営業許可料を支払う認可タクシーのみが営業活動を公式に許可されていた。ウーバーはメキシコで2013年から事業展開しているが、既存のタクシー組合は、空港におけるウーバーの送迎サービスの活動が違法であるとかねて強く反発していたほか、当局もウーバーの運転手に対して高額な罰金を科すなど、厳しい取り締まりが行われていた。
メキシコは2026年6月から7月にかけて、米国・カナダと共催するFIFAサッカーワールドカップを控えている。今回の裁判所の決定は、イベント開催期間中に見込まれる600万人規模の旅行客にとって、メキシコ観光時の利便性向上に寄与すると期待され、ウーバー側も「メキシコの観光エコシステムの強化と国のイメージ向上につながる」とコメントしていた矢先の、SICTからの反論となった。
依然として残る利用リスク
裁判所による差し止め命令は、ウーバーが提起しているアンパロ訴訟(注)の最終判決ではなく、一時的な保護措置だ。そのため、将来的に司法判断が覆る可能性は残っている。ウーバーは10月27日の声明で、今回の差し止め命令の順守を当局に求めると同時に、連邦議会に対し立法措置を講じるよう要請していた。SICTによる公式な否定声明により、空港におけるウーバーのサービス利用が法的に保護されるかどうか、不透明な状況となった。依然として当局による取り締まりのリスクが存在すると認識する必要がある。
(注)行政府や立法府、司法府などの行為により、憲法が保障する国民や企業の基本的権利が侵害された場合、当該行為の差し止めと無効を求める裁判制度。
(深澤竜太)
(メキシコ)
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