米ノースカロライナ州が東京でビジネスセミナーを開催、バイオ分野などでの企業集積や人材育成プログラムに強み

(米国、日本)

調査部調査企画課

2025年10月31日

ジェトロは10月30日、米国ノースカロライナ州のビジネス・投資環境を紹介するセミナーを東京で開催した。同州のジョシュ・スタイン知事(民主党)やジェトロの石黒憲彦理事長らが登壇した。米国でのビジネス展開に関心を持つ日本企業関係者約80人が参加した。

開会あいさつで、石黒理事長はノースカロライナ州について、ライフサイエンス分野で全米屈指の先進地域であり、航空宇宙や電気自動車(EV)分野でも米国スタートアップや大手日系企業が集積しつつあると紹介した。また、「現地で長年、日本企業を支援しているジェトロ・アトランタ事務所を活用してほしい」と訴え、米国展開においては州政府およびビジネスコミュニティとの緊密な連携が重要と述べた(注1)。

スタイン知事は基調講演で、近年の日系企業による投資事例に触れつつ、「日本は同州への外国投資額や雇用数で世界1位で、当州のイノベーションを牽引している」と、日本との強固な関係を示した。また、バイオ、航空、金融などの分野でのさらなる連携強化に注力したいとして、「成功の蓄積がある分野は、企業にとって進出がしやすい」と期待を述べ、「当州政府日本事務所が橋渡し役を務める。大企業にも中小企業にも当州でのビジネス可能性を模索してもらいたい」と訴えた。

写真 講演するノースカロライナ州のスタイン知事(ジェトロ撮影)

講演するノースカロライナ州のスタイン知事(ジェトロ撮影)

ジェトロ・アトランタ事務所の秋山博幸所長は、同州のビジネス概況について、経済成長率、人口成長率、労働組合組織率などを米国南東部の他州と比較するかたちで概説した。また、同州は米国南東部7州(注2)の中でも、進出日系企業数の伸びが2016年以降で最多であり、日本企業の同州への関心の高さが表れているとした。

同州政府のコリー・ハワード日本事務所代表は、同州の特長として、人材確保のしやすさ、全米最低レベルの労働組合組織率、2030年に0%になる法人税、低い建設・電力コスト、助成金や州内58カ所のコミュティカレッジでの従業員トレーニングを含むインセンティブを挙げた。また、進出日系企業については、「自動車、ライフサイエンス、航空、食品・飲料分野での活躍が目覚ましい」「とりわけリサーチ・トライアングル・パーク地域(注3)で存在感が際立っている」と述べた。日本人コミュニティが充実していることも好材料だとして、「日本企業が自信を持って駐在員を送り込める州だ」と強調した。

同州への進出企業も登壇し、同州の魅力を語った。バイオ医薬品の開発・製造・受託を行う工場を設立した富士フイルムの飯田年久取締役執行役員は、同州での工場設立を決めた理由として「同州の最大の魅力は人材。ライフサイエンス産業のハブであり、当該産業の蓄積と従業員のトレーニング機会があることが重要だった」と語った。続いて、トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースアメリカのドン・ステュワート社長は、同州で建設している電気自動車(EV)用バッテリー工場のプロジェクトについて紹介したうえで「デューク大学などのトップレベルの大学、州のトレーニングプログラムなどがあり、人材の確保は問題にならない。州の環境規制が連邦政府の環境規制と足並みをそろえていることも利点だ」と語った。

(注1)ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立の米国立地選定支援サービスを提供しているほか、ノースカロライナ州を含む各州政府から日本企業へのブリーフィング動画を公開している

(注2)アラバマ州、フロリダ州、ジョージア州、ミシシッピ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州。

(注3)ローリー、ダーラム、チャペルヒルの各都市を結んだ三角形に由来する地域。医学部のある大学が多数立地し、バイオ・医薬関係の産業集積がある。

(坂戸俊輔)

(米国、日本)

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