フランスの大手航空機エンジンメーカーSafran、モロッコに航空機エンジン複合施設建設へ

(モロッコ、フランス)

ラバト発

2025年10月17日

フランスの大手航空機エンジンメーカーSafran外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)は10月13日、モロッコのカサブランカ近郊ヌアサーで、航空機エンジン産業複合施設(Safran Aircraft Engine Services Casablanca MRO)の建設開始式を開催した(10月13日付Safranプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。開始式はモロッコ国王モハメッド6世の主宰の下で行われ、ムーレイ・エル・ハッサン皇太子も参加した。

同施設の建設は2024年10月28日、フランスのマクロン大統領によるラバト訪問中(2024年11月26日記事参照)に発表された。カサブランカのヌアサー航空産業フリーゾーン「ミッドパーク(Midparc外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」内に設置され、Safranによる航空機エンジンの組み立て・試験工場と、次世代エンジンLEAP(Leading Edge Aviation Propulsion)の整備・修理工場の2つで構成する。

10月13日付モロッコ政府の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、整備・修理工場には13億ディルハム(約208億円、1ディルハム=約16円)が投資され、年間150基の整備能力を持ち、2030年までに600人の雇用が創出されるとしている。また、LEAP-1A型エンジンの組み立て・試験工場には21億ディルハムが投資され、年間350基の組み立て能力を持ち、2029年までに300人の高度技能職の創出が見込まれているという。

リヤド・メズール産業・貿易相は「世界で2拠点目のLEAP-1A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますエンジンの生産工場(フランス国外初)となるこのプロジェクトは、モロッコに新たな部品メーカーを呼び込むことに貢献し、モロッコの世界的な航空産業の戦略的ハブとしての役割を強化するものだ」と指摘した。また、同氏は同国の航空産業について「輸出売上高が、2004年の10億ディルハム未満から、2024年には260億ディルハム超へと大幅に増加する」と述べ、「現在では世界的な大手企業を含む150以上の企業が活動しており、これはモロッコの産業技術力の象徴だ」と強調した。

開始式ではSafranとモロッコ政府の間で、次の3つの協定が署名された。

  1. Safranの組み立て・試験工場設置に関する覚書
  2. ミッドパーク(Midparc)への工場設置に関する協定
  3. 同社の2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2018年比で50%削減する戦略の一環として、モロッコ国内の主要施設に再生可能エネルギーを供給する覚書(2026年から適用開始)

なお、モロッコでは9月30日~10月2日、第8回「Aerospace Meetings Casablanca外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が開催された。複数の地元メディアによると、22カ国から250社以上が参加したという。また、モロッコの地域統合を強化するための複数の協定も署名され、若い才能を支援し、イノベーションを促進するために設計されたモロッコ初の自動試作センター「AMC(Aerospace Moroccan Cluster) Lab」の開設が発表されている。

(注)Safranは、短・中距離航空機用エンジンの世界最大手で、航空機メーカーを除く航空産業では世界第3位。LEAP-1A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、短・中距離の民間航空機向けに設計した最新世代のエンジンで、主にAirbus A320neoシリーズに搭載されている。同社はモロッコに拠点を26年間構え、現在10カ所の施設で4,800人以上を雇用。モロッコの航空宇宙産業を牽引し、地元企業や政府機関、研修機関との緊密な連携を維持している。

(鈴木優香)

(モロッコ、フランス)

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