海の波を利用、ポルトガルで波力発電の実証実験、2029年までの商用化目指す
(ポルトガル、スウェーデン、日本)
マドリード発
2025年10月02日
スウェーデンの波力発電企業コーパワー・オーシャン(CorPower Ocean)が2020年からポルトガルで進めている波力発電実証プロジェクト「HiWave-5
」がいよいよ最終段階に入った。実証プロジェクトの成功により、ポルトガルで波力発電導入の可能性が高まる。同社は9月18日には、後続の商用化プロジェクトに向けた再生可能エネルギー(再エネ)実証海域の調査完了を発表した。
コーパワー・オーシャンは2023年9月から、北部ビアナ・ド・カステロ沖で同社初の商用規模の波力発電機「C4」の単機での実証を実施している。これは人間の心臓のポンプ機能に着想を得ており、軽量かつ低コストでの設計、また波の状況に応じて同調・非同調を切り替えて効率的に発電し、悪天候下の高波の影響を最小限にして安全性を確保できるのが特徴だ。2023年に発生した嵐の際、最大18メートルの波にも耐え、新記録を樹立した。試運転フェーズでは、海底送電ケーブルでポルトガルの送電網に接続し、最大600キロワット(kW)の出力を記録している。
同社は実証結果を踏まえ、商用段階では複数の波力発電ユニットを横並びに増設し、発電所を数百メガワット(MW)からギガワット(GW)級まで段階的に拡張することができる。独自開発の軽量高強度アンカーを核とする係留・集電のモジュール方式で、発電所の拡張を容易に行い、稼働率を最大化できるとしている。
日系ベンチャーキャピタルからも資金調達
同社は今後、ポルトガル北部沖に10MW規模の波力発電所「VianaWave」を建設する予定だ。この商用フェーズでは、年間30ギガワット時(GWh)を発電、7,500世帯に電力を供給する計画で、2028~2029年の運転開始を見込んでいる。
このHi-Wave5プロジェクトは、スウェーデンのエネルギー庁や「ポルトガル2020プログラム」から支援を受けている。また、コーパワー・オーシャンは欧州最大級の脱炭素化ファンドのEITイノエナジーや、欧州委員会、スコットランド自治政府が設立した波力エネルギー技術促進機関など、EU基金の支援や投資家より資金援助を受けている。後続の商用化プロジェクトでも、EUイノベーション基金から4,000万ユーロの助成金を確保した。さらに、7月には東京ガスのコーポレートベンチャーキャピタル「アカリオ」と、フランスの液化天然ガス(LNG)輸送大手GTTの投資部門が戦略的投資家として参画し、量産・市場展開に向け後押ししている。
同社関係者によると、波力は耐久性・長期的信頼性、設置・保守のコスト、環境配慮といった課題を抱える一方、太陽光や風力発電、蓄電技術とのハイブリッドで、系統の安定化と再エネ発電の効率化に寄与する。また、電源ごとに建設単価や燃料費などを想定し、発電コストを評価する均等化発電原価(LCOE)が最大20%減となり、コスト削減の可能性もあるという。
(小野恵美)
(ポルトガル、スウェーデン、日本)
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