酒類のオンライン販売解禁へ、フィンランド議会で審議開始
(フィンランド、EU)
ロンドン発
2025年10月15日
フィンランド議会は10月8日、酒類のオンライン販売と配送を可能とするアルコール法改正案の審議を開始した。
現行法では、フィンランドでの酒類の小売り販売は、国営企業のアルコ、または小売りライセンスを持つ小売店での対面販売に限られている(注、2024年6月13日記事参照)。今回の法案では、アルコや小売店、EU域内の事業者によるオンライン販売と配送を可能にする「配送ライセンス」の新設が盛り込まれている。
18歳未満や、明らかな酩酊(めいてい)者への販売はオンライン販売でも禁止され、配達時間は午前9時から午後9時までに限定される。医療や福祉、教育の施設や公共のレクリエーション施設への配送も認められない。
フィンランド政府が2024年10月に提出した当初案では、アルコや小売店に配送を認める一方で、国外からの越境遠隔販売に関する規定が不明確だったため、欧州委員会から「国外事業者に不利」との懸念が示された。これを受け、同政府はEU域内からの越境遠隔販売を認める内容に修正し、9月25日に改正案を提出した。
国内小売店に不利な内容、与党内からも反対の声
一方、アルコ以外の小売店はオンライン販売でもアルコール度数8%までの酒類しか販売できないのに対し、改正案ではEU域内からの販売にはアルコール度数の制限が設けられておらず、国内小売店よりも有利になる可能性がある。この点について、連立与党のキリスト教民主党は国外事業者にもアルコール度数の制限を設けるべきとして、反対の立場を取っている(「yle」9月25日)。さらに、これまで全面禁止されていたアルコール度数22%超の酒類のオンライン広告を一部解禁する内容も含まれており、これも同党の反対理由となっている。ただし、同党の議席数は5にとどまり、他の与党が賛成すれば、法案は可決される見通しだ。
施行は2026年1月1日の予定で、配送ライセンスなどの規定は6カ月後から施行のため、オンライン販売の配送が可能となるのは2026年後半とみられる。
(注)アルコ以外の小売店は、アルコール度数5.5%以下の酒類(発酵酒類については8.0%以下)のみ小売り販売が可能。また、ブドウ栽培からワイン醸造まで自社で行うエステートワインのワイナリー、クラフトビール醸造所は隣接店舗で一定数量まで小売り販売が可能。
(林伸光、半井麻美)
(フィンランド、EU)
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