英シンクタンク、アフリカ域内の貿易・投資動向を解説

(アフリカ、英国、ザンビア)

ロンドン発

2025年10月02日

英国ロンドンのシンクタンクODIグローバルは9月23日、地政学リスクの高まりが世界のサプライチェーンに及ぼす影響とその対応策をテーマに、セミナーを開催した。アフリカに関しては、元WTOエコノミストのパトリック・ロー氏、東アフリカ協会事務局長のアグネス・ギタウ氏、ザンビア駐英国高等弁務官のマセンジェ・マゾカ氏の3人の専門家が登壇した。

ロー氏は、アフリカの貿易全体に占めるアフリカ域内貿易の割合が物品で約15%、サービスで約7%と低水準にとどまっていると指摘し、これは、EUの域内貿易が約60〜70%なのと比べて非常に低く、アフリカでは域内貿易の拡大余地が大きいと述べた。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)については(注1)、関連インフラの不足や、既存の貿易障壁、特別経済区(SEZ)の扱い(注2)、地域経済共同体(RECs)間の合意(注3)などの複雑な課題が残っているものの、各種の制度が整備されれば、域内貿易を通じてアフリカ全体が大きな利益を得られると語った。

ギタウ氏は、アフリカ諸国の民間セクターがAfCFTAに積極的に関与している点を評価した。特に新型コロナウイルス禍では、中国やEUからの製品調達が困難になったことを受け、多くの企業が域内のサプライチェーンの強化に取り組んだと述べた。さらに、従来は英国やEU諸国の企業によるアフリカ向け投資が主流だったが、近年はアフリカ企業による域内投資が拡大しており、従来は見られなかった新しい動きだと指摘した。

マゾカ氏は、国際情勢が不安定な中、ザンビアは西側諸国との関係を強化する一方で、中国、インド、日本、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)などとの経済関係も強化していると説明し、ザンビアは豊富な鉱物資源を有しているが、資源供給にとどまらず、国内での加工・製造の促進に注力していると述べた。

写真 イベントの様子(ジェトロ撮影)

イベントの様子(ジェトロ撮影)

(注1)アフリカ連合(AU)加盟の55カ国・地域による自由貿易圏

(注2)輸出・雇用振興を目的に、免税などの各種優遇措置を適用するみなし外国地域

(注3)関税同盟や自由貿易協定(FTA)を備えた複数の地域経済共同体

(植松麗良)

(アフリカ、英国、ザンビア)

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