イタリアでAI国内法が成立、最大10億ユーロ規模の支援策も

(イタリア、EU)

ミラノ発

2025年10月06日

イタリア上院において9月17日、人工知能(AI)に関する国家法案(AI国内法)が可決承認され成立し、9月25日に官報に掲載された。EUが定めたAIを包括的に規制する規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(AI法)(2024年5月27日記事2025年2月13日記事参照)に整合するかたちで法律化したのはイタリアが初めて。「人間主体」「透明性」「安全」という基本原則のもと、イノベーション、サイバーセキュリティー、アクセシビリティ、プライバシー保護などに重点が置かれている。また、医療、労働、行政、司法、教育、スポーツなどの分野において、トレーサビリティの確保や、責任の所在が人間であることなどが明確化された。なお、AIの学習に使用されるデータやアルゴリズム、数学的手法に関する法律を制定する権限は政府に委任される。

ミラノ工科大学の調査によると、2024年のイタリアのAI市場規模は12億ユーロに達し、前年比58%増と拡大している。アルベルト・バラキーニ内閣府情報・出版担当政務次官は、イタリアAI国内法は防衛や安全保障まで網羅しており、EUのAI法を補完していると評価。ディープフェイクなどに対抗する独自の道筋をつけたとした。また、AIに関して信頼できるガバナンスと透明性のあるルールが整備できたとし、海外からの投資を呼びかけている。

AIに関する主管庁は「国家サイバーセキュリティー庁(ACN)」と「イタリアデジタル庁(AgID)」となる。ACNは監督権限を有し、システムの適合性と安全性を監視する。AgIDは関係省庁間の調整役を担い、国民や企業に向けてAIの安全な利用を推進する。AIの国家戦略は、ACNおよびAgIDの支援のもと、内閣府デジタルトランスフォーメーション局が2年ごとに策定・更新する。透明性を担保するため、議会によるモニタリングも計画されている。

また、AI、サイバーセキュリティー、量子コンピューティング、Web3、オープンアーキテクチャなど、新興の基盤技術に関する事業の発展を支援するために、最大10億ユーロの補助金政策が盛り込まれている。対象となるのはイタリアに拠点をおくスタートアップや中小企業で、創業初期だけでなくスケールアップ段階の企業も対象となる。さらに、国内の技術力を牽引する存在として、大企業も一部支援の対象に含まれる。

加えて、AIがデータを学習する際に、個人情報や著作権が保護されることや、AIを使用して作成された作品にも、著者の知的作業が含まれる場合には著作権が発生することなどが定められた。AIが生成または改変したコンテンツを違法に拡散した場合や、AIを用いて詐欺が行われた場合などは刑事罰の対象となる。

(平川容子)

(イタリア、EU)

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