大阪・関西万博のナショナルデーに合わせ、「サウジ・ビジョン2030フォーラム」を開催
(サウジアラビア、日本)
調査部調査企画課
2025年10月06日
サウジアラビア政府は9月22日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)におけるナショナルデー(9月23日)および建国95周年記念行事に際し、「サウジ・ビジョン2030フォーラム」を大阪・関西万博のホールで開催した。サウジアラビアは世界最大級の石油輸出国だが、石油依存型の経済から脱却し、経済・社会・文化の多角化を進めようとしている。
冒頭、リヤド市のファイサル・ビン・アブドゥルアジーズ・ビン・アイヤーフ市長が基調講演を行った。国家戦略の「サウジ・ビジョン2030」(ビジョン2030)は「活気ある社会」「繁栄する経済」「野心的な国家」を3本柱に掲げ、その実現を目指しているとし、投資が日・サウジの将来の関係形成に重要な役割を果たすとの期待を述べた。なお、サウジアラビアは、2030年の国際博覧会開催国であり、大阪・関西万博と次期リヤド万博は、国際的課題の解決、明日の多国間主義の機運醸成に寄与するとした。
基調講演を行うファイサル・ビン・アブドゥルアジーズ・ビン・アイヤーフ・リヤド市長(ジェトロ撮影)
その後、ビジョン2030およびその基盤となる人材分野における取り組みが同国の政府関係者から紹介された。まず、人材分野における取り組みについて、医療分野変革プログラム(HSTP)のハーリド・アルシャイバーニー最高経営責任者(CEO)は、専用アプリを通じた医療サービスや110カ所の病院で展開されているバーチャルヘルスケア、治験薬の臨床試験にビッグデータと人工知能(AI)を活用している例などを紹介し、医療分野の先進性を強調した。
「活気ある社会」に関するセッションでは、社会変革のためのスポーツ文化の深化が取り上げられた。スポーツ省国際交流部のアブドゥッラー・マグラム氏は、サウジアラビアで2018年以降、F1レース、テニス、ボクシングなど、150以上のスポーツイベントが開催されていると紹介した。同国のスポーツ市場は急速に成長しており、スポーツ関連産業で13万人の雇用創出を目指しているとした。
「繁栄する経済」に関するセッションでは、文化開発基金のバシール・アルアローラCEOらが登壇した。映画産業などの、サウジアラビアの文化・娯楽産業の市場規模は2019年に37億ドルだったが、2030年には480億ドルに成長することが見込まれており、「文化ルネッサンス」の最中にあるとし、日本からの投資を呼びかけた。また、イノベーションに関しては、研究開発(R&D)やディープテックなどの分野の市場規模が2030年までに1兆ドルに達する見込みだとした。サウジアラビアのベンチャーキャピタル(VC)による投資額が2024年に約7億5,000万ドルに達したことを紹介した。
「野心的な国家」に関するセッションでは、ビジョン2030の環境政策「サウジ・グリーン・イニシアチブ(SGI)」(2021年10月25日記事参照)について紹介し、同国のパリ協定やG20の環境目標への貢献を強調した。
(平田若菜、中村周)
(サウジアラビア、日本)
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