沖縄・OISTで国際ディープテックカンファレンス「スタートアップ・エレベート2025」開催
(日本)
沖縄発
2025年10月16日
ライフタイムベンチャーズと沖縄科学技術大学院大学(OIST、注1)
は9月29~30日、ディープテック分野に特化した国際スタートアップカンファレンス「スタートアップ・エレベート2025
」を沖縄県恩納村のOISTで開催した。国内外の投資家や事業会社とのネットワーク構築を促進し、創業初期のスタートアップをグローバル市場に押し上げることを目的に、前年に続いて2回目の開催となった。
スタートアップによるピッチ(ジェトロ撮影)
招待制の同イベントには18カ国から約500人が参加し、選抜されたスタートアップ50社に対して、国内外からベンチャーキャピタル(VC)75社、リミテッドパートナー(LP、注2)31社、事業会社60社が参加した。創薬、医療機器、脱炭素、量子技術など、ヘルスケアやサステナビリティー領域の先端技術を扱うスタートアップや研究者がピッチやポスター展示を通じて事業構想を発表した。また、VCとLPの参加者のみを対象としたラウンドテーブルでは、ディープテック領域での投資戦略や資金循環の課題について、投資家同士で実践的な知見を共有し合った。
ジェトロはライフタイムベンチャーズとの共催で、「沖縄セッション」を実施した。海外VC3社を招聘(しょうへい)し、県内スタートアップ10社が参加するピッチ・メンタリングセッションを行ったほか、イベント前日には県内エコシステム関係者との交流イベントも開催した。
沖縄セッションでのメンタリング(主催者提供)
ディープテックスタートアップ育成の課題とOISTの取り組み
カンファレンス冒頭では、ライフタイムベンチャーズの木村亮介代表パートナーが「日本のヘルスケアサステナビリティー領域はいまだ発展途上にある。世界を目指す起業家と、資金以上の価値を提供できる投資家が中核となるエコシステム形成が不可欠だ」などと述べ、投資家や事業会社のもつリスクマネーやネットワークをもたらす狙いを説明した。特にディープテックスタートアップの事業化は、依然としてハードルが高い。
OISTのギル・グラノットマイヤー主席副学長はディープテックスタートアップが直面する課題として、「収益化までの長期性」「技術確立に要する大規模資金」「市場変化による技術の陳腐化リスク」の3点を挙げ、「研究者が研究内容を基に起業し、市場が求める製品を開発・商業化するまでには、大きなギャップがある」と指摘した。講演の中で同氏は、研究者が起業する際の技術と市場のギャップを埋める支援策として、OISTが研究成果の事業化を支援するPOC(概念実証)プログラムやアクセラレーションプログラム
などを紹介した。
(注1)OISTは、沖縄県恩納村に位置する理工学分野の5年一貫制博士課程を置く大学院大学。特徴は学際的な研究環境と英語を公用語とする国際性で、自然科学分野を中心に世界中から研究者や学生を受け入れている。
(注2)LPは、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資ファンドに資金を提供する有限責任の出資者。主に機関投資家や事業会社などがLPとして参画し、ファンド運営には直接関与せず、利益を分配で受け取る。
(高濱凌)
(日本)
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