中国国務院、政府調達における国産品の基準・支援策を発表、個別製品の要件策定時には最大5年の移行期間を設定

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年10月03日

中国国務院は9月30日、「政府調達法」や「外商投資法」などに基づき、政府調達における国産品基準と関連政策に関する通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、通知)を発表した(注1)。通知は2026年1月1日から施行される。

通知によると、政府調達における国産品は次の条件を満たす必要があるとされた。

(1)製品は、中国国内で生産(中国の関税領域内で原材料・部品から製品への属性の変化を実現)されなければならない。属性の変化とは、製造・加工・組み立てなどの工程を経て、原材料・部品とは全く異なる新製品が生まれ、新たな名称と特徴(用途)を有することを指す(注2)。

(2)中国国内で生産された部品のコスト比率が規定比率に達していること。財政部は、関連業界主管部門と共同で製品別の規定比率を定める(注3)。製品別の中国国内生産部品コスト比率に関する要求の実施前に、(1)の条件を満たす製品は、政府調達において国産品とみなす。

(3)特定の製品については、(1)(2)の条件を満たした上で、財政部が関連業界主管部門と共同で定める、重要部品・重要工程の中国国内における生産・完成などの要件を満たす必要がある。

製品別の要件は施行後5年以内に策定、業界ごとに3~5年の移行期間も設定

また、財政部は本通知施行日から5年以内に、関連業界主管部門と共同で、国内外企業・業界団体・商工会などからの意見を十分に聴取した上で、製品別に中国国内生産部品コスト比率の要件や特定製品の重要部品・重要工程に関する要件を定める。また、各業界の発展状況に応じて、具体的な製品要件を発表する際に3~5年の移行期間を設けるとした。

さらに、政府調達に国産品と非国産品が参加する場合、国産品には価格評価上の優遇措置を適用し、入札価格から20%を控除した金額で評価に参加させるとした(注4)。

このほか、政府調達の調達者は供給者に「国産品基準適合に関する声明書」などの提出を求め、内容に責任を負わせるとした(注5)。なお、クレーム処理や監督検査などにおいて紛争が発生した場合は、契約書や仕入れ・製造・加工・組立記録など製品の国内生産やコスト比率に関する証明資料の提出が求められ、資料が不十分な場合は支援策の適用対象外となるとされた。

中国社会科学院米国研究所の徐奇渊副所長は通知について、「製品別の中国国内生産における部品コスト比率要件が実施されるまでは、製品を中国税関区域内で生産すれば『国産品』の基準を満たすことになる。これにより同基準の定義が明確になった」と評価した。また、製品ごとの要件の公布時に3~5年の移行期間が設定されたことで、外資系企業にとっては中国国内における生産体制や投資決定の調整のための時間的猶予が与えられた、と指摘した(「中国政府調達報」9月30日)。

(注1)通知の対象となるのは「政府調達品目分類目録」の「商品類」に記載された製品。同通知に関しては、2024年12月5日に意見募集稿が発表(2024年12月13日記事参照)されており、在中国日系企業の団体である中国日本商会をはじめ、欧米など各国の商会が意見を提出していた。

(注2)属性の変化には次の軽微な操作は含まれない。

  1. 輸送または保管期間中の製品状態維持のための操作
  2. 輸送または販売のための包装または展示
  3. 製品またはその包装へのブランド・マーク・識別記号その他区別用表示の貼付・印刷
  4. 単純な塗装・研磨・小分け
  5. その他属性の変化に該当しない場合

(注3)通知の添付文書である「中国国内生産部品のコスト計算基本規則」によると、中国国内で生産された製品の部品コストは、原則としてその二次部品の関連コストに基づいて計算する。製品の一次部品によるコスト計算が中国国内生産部品のコスト判定要件を満たす場合、一次部品の関連コストに基づいて計算することができる。詳細は次のとおり。

  1. 製品の一次部品とは、製品を直接構成する部品を指す。製品の二次部品とは、製品の一次部品を直接構成する部品を指す。一次部品が分解不能な場合は、二次部品とみなす。
  2. 二次部品が中国国内で生産された場合、その全コストを中国国内生産部品のコストに計上する。二次部品が中国国内で生産されていない場合、そのコストは中国国内生産部品のコストとして計上しない。
  3. 製品総コストおよび部品コストは、関連する会計データ、調達契約、仕入記録などに基づき計算する。
  4. コスト計算規則についてさらに明確化が必要なその他の事項については、財政部が関係部門と協議の上別途規定する。

(注4)政府調達に複数の製品が含まれる場合、当該調達に対して供給者が供給する国産品基準適合製品のコスト合計が、当該供給者が供給する全製品のコスト合計に占める割合が80%以上に達するときに、当該供給者が供給する全製品に対して価格評価上の優遇措置を適用する。

(注5)通知の付属文書として「声明書」のひな型が示されている。ひな型には製品名および型番を記載する欄、製造工場名とその所在地を記載する欄(営業許可証の記載内容と同一の必要がある)、当該製品の中国国内生産部品コスト比率と製品ごとの規定比率を記載する欄(当該製品のコスト比率要件が実施される前は記入不要)、当該製品の重要部品・重要工程を記載する欄(当該製品の重要部品・重要工程要件が実施される前は記入不要)が設けられている。なお、通知では、供給者が要件を満たす「声明書」あるいは関連証明書を提出した場合、当該製品は国産品とみなされ、調達者やその代理機関は供給者に追加の証明資料の提出を要求してはならないとされた。

(小宮昇平)

(中国)

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