高等計画委員会、2023年の地域別経済報告を発表、都市部に成長集中
(モロッコ)
ラバト発
2025年10月02日
モロッコ高等計画委員会(HCP)は2023年の地域別国民経済勘定に関する報告書を発表した。全国の実質GDP成長率は3.7%(名目11%)と堅調だったが、12の地域間で成長率や消費支出に大きな差が見られた。
HCPは地域間の経済格差が拡大していることを指摘している。報告によると、西サハラのダフラ=オウエド・エッ・ダハブ地域では、漁業と建設業が牽引し、10.1%の成長で、全国平均を大きく上回り、最も高い成長率を記録した。次いで、フェス=メクネス(8.9%、農業とサービス業が好調)、マラケシュ=サフィ(6.3%、観光業の回復)なども高い成長率を示した。一方、農業依存度の高いベニ・メラル=ケニフラ(マイナス1.3%)やオリエンタル(マイナス1.0%)では、農業生産の減少などの要因からマイナス成長となった。
名目GDPの地域別構成比では、カサブランカ=セタットが32.2%を占め、経済の中心地としての地位を維持した。次いで、ラバト=サレ=ケニトラ(15.7%)、タンジェ=テトゥアン=アル・ホセイマ(10.6%)が続いた。この上位3地域で全国GDPの58.5%を占めており、経済活動の集中が顕著となっている。
2023年の1人当たりGDPは全国平均で4万508モロッコ・ディルハム(約65万4,609円、1モロッコ・ディルハム=約16.16円)で、最も高かったのはダフラ=オウエド・エッ・ダハブ(8万9,533ディルハム)、最も低かったのはドラア=タフィラレット(2万5,324ディルハム)だった。最大で約3.5倍の差が生じている。
同年の地域別の家計最終消費支出(DCFM)は、都市部を中心に上位5地域で74%を占め、内訳はカサブランカ=セタット25.0%、ラバト=サレ=ケニトラ14.6%、フェス=メクネス11.7%、タンジェ=テトゥアン=アル・ホセイマ11.5%、マラケシュ=サフィ11.3%と続いている。
1人当たりDCFMでは、全国平均2万4,092ディルハムで、カサブランカ=セタット(2万9,325ディルハム)など都市部が高水準を示したが、一方、地方は1万7,000ディルハム台にとどまる地域もあり、約1万2,000ディルハムの差が生じている。
モロッコでは経済成長は続いているが、その恩恵は一部地域に集中し、地域格差は年々拡大傾向にある。インフラや雇用、社会サービスへのアクセスにも格差が存在している。
(鈴木優香)
(モロッコ)
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