欧州委の研究機関、循環型経済はエネルギー集約型産業のGHG排出削減に寄与と報告

(EU)

ブリュッセル発

2025年10月15日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は10月3日、循環型経済(サーキュラーエコノミー、CE)の施策は、エネルギー集約型産業(鉄鋼、アルミニウム、セメント・コンクリート、プラスチック)からの温室効果ガス(GHG)排出削減に大きく寄与し得るとする報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。特に鉄鋼とプラスチック産業は、循環性を高める施策の導入によってGHG排出が削減できる潜在性が高く、輸入依存を低減し、エネルギーと経済の安全保障を向上させるとした。

同報告書は、CE政策の策定と実施に関する意思決定に役立てられることが狙いだ。対象とした上述のエネルギー集約型産業は、EU製造業のGHG排出の約44%を占め、EUの自律性と競争力を支える基盤産業でもあり、総売上高7,290億ユーロ、フルタイムの直接雇用約240万人を擁する。

同報告書は、対象産業の材料のライフサイクル全体で、気候と環境、社会経済、エネルギー・原材料の輸入依存度への影響を2050年までの3つのシナリオ〔(1)単にエネルギー転換が起こると仮定する「ベースライン(BL)シナリオ」、(2)既存のCE目標のうち選定されたものが達成された場合、(3)より野心的なCE目標が設定された場合)で定量化した。

(3)のより野心的なCE目標を設定した場合は、2050年時点の(1)のBLシナリオと比べ、全部門のGHG排出削減幅が大きい。プラスチックは二酸化炭素(CO2)換算で75~84メガトン(Mt CO2-eq)、鉄鋼は64~81メガトン、セメント・コンクリートは38~52メガトン、アルミニウムは12~14メガトンの追加削減(消費と生産の両フットプリントを含む)となる。資源(エネルギーと原材料)の使用量の削減や貿易依存度の低下にも寄与するとした。

上記を踏まえ、次の追加調査を実施すべきとした。

  • 修理や再製造などがサービス部門に与える影響。
  • 消費者の行動変化が社会に与える影響。
  • リサイクル材の品質変化がマクロ経済に与える影響。
  • 貿易関係の急激な変化やEU域内生産製品の購入義務、GDP成長率の変化やエネルギー情勢の変化などの極端なシナリオの影響。
  • CE政策の具体的な実施方法や移行措置。

(大中登紀子)

(EU)

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