米国、アルゼンチン支援で通貨スワップ枠に加え、200億ドルを追加支援へ

(アルゼンチン、米国)

ブエノスアイレス発

2025年10月22日

米国のスコット・ベッセント財務長官は10月15日、財務省で行われた記者会見において記者団に対し、アルゼンチン向けの支援ですでに合意している200億ドルの通貨スワップ枠に加えて、追加で200億ドルの支援を検討していると発言した(米ニュースメディア「ポリティコ」10月15日)。実現すれば、合計400億ドルの支援を行うことになる。

ベッセント長官は支援の内容について、すでに合意した200億ドルの通貨スワップ枠の設定に加えて、200億ドルの民間ファシリティを構築することを明らかにした。支援の条件は選挙結果に依存せず、より良い政策を継続する限り支援するとしている。200億ドルの通貨スワップ枠は、IMFの特別引出権を含む米国政府の為替安定基金(ESF)を財源とするが、追加の200億ドルは民間銀行、ソブリンファンドと連携したスキームとなる。

10月14日に開かれた米国のドナルド・トランプ大統領とアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領の昼食会に先立って行われた、記者会見におけるトランプ大統領の発言(2025年10月)が、10月26日の中間選挙で与党・自由前進(LLA)が敗北した場合に米国が支援を打ち切るとの推測を呼んだが、米国政府は翌15日、10月9日に続いて外国為替市場でアルゼンチン・ペソを購入する介入を行い、為替レートは1ドル=1,300ペソ台後半のペソ高を維持した。

しかし、10月20日現在の為替レートは、バンドの上限1ドル=1,490.57ペソに対して1,462.83ペソと、再び上限に接近している。米国の支援にかかわらず、選挙を前にリスクを回避するペソ売りの動きが強まっているとみられる。10月20日にはアルゼンチン中央銀行が、米財務省と通貨スワップ協定に署名したと発表しており、選挙前後の為替動向に注目される。

ハビエル・ミレイ大統領への支持率は足元、側近の汚職疑惑、麻薬取引疑惑のある実業家からの金銭授受による中間選挙有力候補の立候補取り止めなどで低下している。少数与党であるため、国民の支持はミレイ政権の支えだったが、それが揺らいでいる今、米国の支援は同政権にとっては重要な支えとなっている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、米国)

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