オーストラリアのアルバニージー首相再選後初の米国との首脳会談で、重要鉱物安定供給の枠組みに合意

(オーストラリア、米国)

シドニー発

2025年10月30日

オーストラリア連邦政府のアンソニー・アルバニージー首相は10月20日、米国の首都ワシントンで、ドナルド・トランプ米大統領と首脳会談を行った。2025年5月の同首相再選後の初となる米国との首脳会談で、重要鉱物やレアアースの安定供給に向けた2か国間の枠組みに署名したことを発表した。防衛や先進技術に不可欠な重要鉱物、レアアースについて、採掘・選鉱・製錬を含む供給網を強靭(きょうじん)化し、供給の安定を確保することを目標とする。経済政策や協調投資を通じて、重要鉱物やレアアースの多様性、流動性、公正な市場の構築を加速し、目標を達成するとした。さらに、2026年までに生産能力の増強も目指す。

今回の枠組みを補完するため、今後6カ月間でオーストラリアと米国での85億米ドル規模の優先重要鉱物プロジェクトに対し、両国それぞれが少なくとも10億米ドルの投資を行うことも発表した。

オーストラリア連邦政府は21日、2件の優先プロジェクトへの資金拠出を発表した。1件目は、西オーストラリア州の「アルコア・双日ガリウム回収プロジェクト」で、オフテイク権を含む最大2億米ドルを出資する。日本と米国、オーストラリアの3カ国によるプロジェクトで、世界のガリウム供給量の最大10%を供給する。2件目は、ノーザンテリトリー州の「アラフラ・ノーランズプロジェクト」で、1億米ドルの出資を行う。操業開始後、世界のレアアース供給量の5%を生産する計画だ。

合意した政策枠組みには、「新たな投資支援制度を共同開発」「180日以内に鉱業・鉱物・金属投資閣僚会議を開催予定」「採掘・選鉱・製錬に関する許認可の簡素化・迅速化」「非市場的な貿易慣習から国内市場を守るため、価格下限などの制度を導入」「国家安全保障上の観点から、鉱物資産の売却を監視・抑制」「鉱物のリサイクル技術に投資し、スクラップ管理で供給網を多様化」「他国とも協力し、供給網の安全性を確保」「オーストラリア・米国、さらにその他地域で鉱物資源の地質調査を共同で実施し地質図を作成」「供給リスクに迅速に対応するため、両国共同の重要鉱物供給保障チームの設置」なども組み込んだ。

アルバニージー首相は今回の合意について、70年以上の両国の同盟が歴史的、象徴的に新たな段階に入ったとした。オーストラリアの豊富な重要鉱物を生かして、防衛や他の先端技術を支え、両国の労働者・企業・投資家を支援していくとの意気込みを見せた。

(山崎美樹)

(オーストラリア、米国)

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