東ジャワ州JIIPE、政府の「下流化」政策背景に中国企業の投資加速

(インドネシア)

ジャカルタ発

2025年10月20日

インドネシア政府が重要戦略インフラ事業の「国家戦略プロジェクト」に指定する東ジャワ州グレシック県の工業団地、Java Integrated Industrial and Ports Estate(JIIPE)では、大規模なインフラ開発が進む中、中国企業を中心とした投資が活発化している。ジェトロは10月9日、JIIPEを運営するブルカ・カワサン・マニャール・スジャテラ(BKMS)社を訪問し、開発の進捗や投資動向についてヒアリングした。

写真 JIIPE工業団地の開発の様子(10月9日時点、ジェトロ撮影)

JIIPE工業団地の開発の様子(10月9日時点、ジェトロ撮影)

JIIPEは、総面積3,000ヘクタールの敷地に、工業団地や港湾、住宅地が一体となった総合開発地で、経済特区(SEZ)にも指定されている。SEZのインセンティブとして、法人所得税が最長20年間免除されるタックスホリデーが設けられており、適用に必要な最低投資額が低く設定されるなど、より利用しやすい条件となっていることが海外からの大型投資を呼び込む要因の1つとなっている。

同社マーケティングチームによると、グレシック県の最低賃金は比較的高水準のため、労働集約型産業ではなく、銅精錬や石油化学といった資本集約型の中・重工業の誘致に注力している。実際に、米国系鉱業大手フリーポート・インドネシアによる大規模な銅精錬所の建設や、中国のガラス最大手の信義ガラスグループの進出が資本集約型産業の誘致の具体例として挙げられる。

特に近年は、政府が推進する国内資源の高付加価値化を目指す「下流化」政策を背景に、関連産業への投資に向けた動きが見られる。その中で、電気自動車(EV)バッテリー用の銅箔(どうはく)を製造する中国の非鉄金属大手の浙江海亮は、2024年から工場を操業させている。この工場は同じ工業団地内にあるフリーポート・インドネシアの銅精錬所から原材料の供給を受ける計画で、インドネシアが目指すEVバッテリーエコシステム構築で、銅箔という重要部品の国内生産を担う存在として位置づけられている。2023年6月の起工式に出席したジョコ・ウィドド大統領(当時)は国内での資源加工の重要性を強調し、同プロジェクトへの期待を示していた(2023年6月20日付内閣官房プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

一方で、日系企業からの投資は近年少ない状況にあるという。現在、企業からの問い合わせ対応は国籍を問わず、3人のチームで行われており、特に引き合いの多い中国企業には、中国語対応が可能な担当者がメインで対応しているという。

インフラ面では現在、工業団地の正門に直結する新しい高速道路が計画・建設中のほか、第2期港湾エリアの埋め立て工事も進行中で(2025年末もしくは2026年初頭に完了予定)、物流拠点としての利便性はさらに高まる見通しだ。

(八木沼洋文、中沢稔)

(インドネシア)

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