スペイン最高裁、被雇用者の立場だった日本人画家の共同著作者性を認定
(スペイン)
デュッセルドルフ発
2025年10月27日
スペイン最高裁判所は9月30日、日本人画家の根岸文子氏がスペインのポップアーティスト、アントニオ・デ・フェリペ氏の作品221点に対する共同著作者と認定した。
根岸氏は2006~2016年にフェリペ氏のスタジオで勤務し、同氏の構想やスケッチを基に多数の作品を制作した。第一審は、原告(根岸氏)が被告(フェリペ氏)のスタジオで雇用関係のある「従属的な立場」で制作活動を行っていたと認定し、スペイン著作権法第7条が定める共同著作物の要件(対等な立場での共同創作)を満たさないとして、共同著作者性の主張を退けた。
しかし、控訴審(第二審)と最高裁(最終審)は、雇用関係の有無にかかわらず、制作過程に創造的判断が認められる場合には著作者性は否定されないとし、根岸氏の制作には構想の具体化で創造的判断が含まれていたとして、原告の共同著作者性を認定した。
この最高裁判決は、従来の「従属的な雇用関係がある場合は共同著作に該当しない」とする解釈に対し、創作への実質的な貢献の有無を重視する判断を示した点で注目される。今後、スペインにおける雇用関係下の創作者の著作権帰属や表示に関する実務に影響を与える可能性がある。
(吉森晃、佐藤吉信)
(スペイン)
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