秋季合同経済予測、財政拡張で景気下支えも、構造的問題は解決せず

(ドイツ)

ベルリン発

2025年10月24日

ドイツの主要経済研究所(注)は9月25日、秋季合同経済予測を公表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。2025年の実質GDP成長率を0.2%と予測し、前回の春季予測より0.1ポイント上方修正したが、同年の経済成長はほぼ停滞という見方を示している。2026年は1.3%として前回予測を据え置き、2027年は1.4%としている(添付資料表参照)。春季予測から大きな修正はなかったが、2025年上半期の停滞で景気が底を打った後は、拡張的な財政政策が成長を下支えするとした。

秋季予測では、拡張的財政政策が成長の弱さを覆い隠すと指摘した。メルツ新政権による財政規律緩和で国防やインフラ、気候関連への支出が拡大する一方(2025年3月24日記事参照)、計画、調達に時間がかかり、資金の支出が予算計画よりも大幅に遅れる可能性がある。また、2027年以降は大幅な歳出削減が必要になり、それらが成長押上げ効果を弱めるとした。

構造面では、国際的に見て高いエネルギーや人件費、深刻化する専門人材不足、競争力低下といった問題が依然として経済成長の重荷となっていると指摘している。輸出は米国の高関税政策の影響などで力強さを欠き、過去の景気回復局面と異なり、外需主導の拡大は望みにくい。そのため、今後の成長は公共部門や個人消費といった内需に集中するとの見通しを示した。

雇用については、今後数年で増加に転じ、実質所得の伸びが民間消費を押し上げると予測した。消費者物価指数は2025年に2.1%、2026年に2.0%と、欧州中央銀行(ECB)の目標2%前後の水準で推移する見通しだ。

秋季予測ではまた、ドイツが経済政策の転換期にあるとし、社会保障改革、経済成長、人材育成、エネルギー政策の転換など12項目からなる経済政策指針を提案した。異例の詳細な提言を政府への警告とみる向きもある(「ハンデルスブラット」紙9月25日)。

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は合同経済予測の発表を受け、「経済状況は依然深刻だ」とコメントした(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。米国の関税政策や政府の中途半端な改革姿勢が企業の投資意欲を抑制していると批判し、税制やエネルギーコスト、官僚主義軽減のための真の負担軽減を政府に強く求めている。

(注)合同予測は経済・気候保護省の委託を受け、国内の主要経済研究所のドイツ経済研究所(DIW)、ifo経済研究所、キール世界経済研究所(IfW)、ハレ経済研究所(IWH)、ライプニッツ経済研究所(RWI)が年に2回共同で作成している。

(打越花子)

(ドイツ)

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