チリ大統領選の世論調査結果では共産党ハラ氏がトップも、決選投票での支持率は低調
(チリ)
調査部米州課
2025年10月23日
11月16日に予定されるチリ大統領選挙まで1カ月を切った。10月19日に調査会社カデムが公表した世論調査結果では、「大統領選挙が次の日曜日に開催されるならば、いずれの候補者に投票するか」という設問について、左派共産党のジャネット・ハラ氏が支持率26%でトップに立った(添付資料表参照)。ハラ氏は8月以降、安定して20%台後半の支持率を維持している。2番手は右派共和党のホセ・アントニオ・カスト氏(22%)だったが、同氏は8月以降少しずつ支持率を落としているかたちだ。中道右派連合チレ・バモスのエブリン・マテイ氏は支持率14%で3位に位置している。
今回の大統領選は、現状、圧倒的な支持を得ている候補者がおらず、決選投票が実施される可能性が高い。現在、1回目の投票については支持率トップのハラ氏だが、決選投票に進んだ場合は不利になることが予想される。同世論調査によると、カスト氏とハラ氏による決選投票の場合、49%がカスト氏に投票すると回答している一方、ハラ氏は33%にとどまる(添付資料図1参照)。また、マテイ氏とハラ氏による決選投票の場合でも、マテイ氏支持が48%であるのに対し、ハラ氏は30%だ(添付資料図2参照)。決選投票に進んだ場合のハラ氏の支持率が低い一因として、現政権への低調な支持率が挙げられる。ハラ氏は与党左派連合からの立候補であるため、現政権が治安や移民問題などを十分に解決できていない点を懸念する層からの支持を集められていないとみられる。また、チリには共産党への抵抗感が根強く(注)、共産党候補者当選を防ぎたい層がハラ氏ではない候補者支持に回っていることもある。
一方で、決選投票での投票先をまだ決めていない有権者も一定数いるため、ハラ氏が彼らを取り込むことにより接戦となる可能性もあり、今後の動向に注目が集まる。
(注)深刻な経済危機を経験した1970年代の社会主義政権には共産党も関与していたこと、1990年まで続いた軍事政権において反共産主義のプロパガンダが実施されていたことなどにより、共産主義への抵抗感のある層が一定程度存在する。
(佐藤輝美)
(チリ)
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