モロッコ、Z世代による教育・医療改革デモ、全国に飛び火
(モロッコ)
ラバト発
2025年10月06日
モロッコでは9月末から、Z世代の若者を中心とした社会改革を求める抗議活動が続いている。同月17日付の地元メディア「Telquel」紙によると、このデモ活動は、アガディールの公立病院で妊婦8人が死亡した事件など、劣悪な医療サービスに対する不満をきっかけに、中旬にSNSを通じて立ち上がった「GenZ212」と名乗るグループが主導し、公共医療や教育制度の改革、若者の尊厳と将来への希望、政府の説明責任と腐敗の撲滅などを掲げているものだ。一部で治安部隊との衝突を伴いながら激化し、国内23都市に拡大している(10月3日時点)。
GenZ212は9月27~28日にSNSを通じて数万人を集め、カサブランカ、ラバト、タンジェ、マラケシュ、アガディールなど複数都市で座り込みやデモを行った。デモは当初、この2日間(9月27、28日)の限定的かつ平和的な行動として計画していた。しかし、その後も座り込みなどの抗議活動は続き、30日夜から一部都市(インゼガン、ベニ・メラル、ウジダなど)で商店への侵入や火災などの暴力行為が発生し、特に政府による開発投資が十分でない都市や地域でデモの一部が過激化した。
正確な被害規模は不明だが、複数の地元メディアによると、9月30日と10月1日の2日間で少なくとも3人が死亡し、デモ参加者と治安部隊の双方合わせて数百人規模の負傷者が出ているとされる。また、物的被害も確認されており、治安部隊車両と私有車を合わせて少なくとも500台が破壊され、公的施設など少なくとも80カ所が襲撃を受けたという。また、内務省は、参加者の70%以上が未成年者、一部の集団では100%が未成年者だったとし、彼らが暴力行為に関与していることを指摘した。さらに、一連の抗議活動で400人以上が拘束されたとされ、検察庁は193人を起訴したとしている。
10月2日の議会でアジズ・アハヌッシュ首相はここ数日間にモロッコ各地で発生したGenZ212関連の暴力的な出来事に言及し、政府として若者たちとの対話を通じて事態の収拾と社会課題の解決に取り組む姿勢を示した。
このデモの影響で、カサブランカ証券取引所では複数の株価指数が下落し、経済活動にも影響が見られた。
在モロッコ日本大使館によると、「10月3日午前8時(モロッコ時間)の時点で邦人を含む外国人の被害情報はない。日本人を理由に標的となる可能性も低い」としているが、不用意にデモや人だかりに近づかないよう、注意を呼びかけている。在モロッコ日系企業への影響については、「標的とされたケースや、標的とすることをほのめかす声明なども未確認だ。今回のデモは外国人を標的としたものではないことから、日系企業が直接被害を受ける可能性は低い」としつつ、情勢は極めて速い速度で変化していることから、警戒を求めている。
(鈴木優香)
(モロッコ)
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