バスクBCCが食のオープンイノベーション・ハブ「GOe」を始動
(スペイン)
マドリード発
2025年10月27日
スペイン北部バスク州サン・セバスチャンで10月20日、「ガストロノミー・オープン・エコシステム「GOe」
」の開所式が行われた。これは、同州にある料理学の教育研究施設であるバスク・カリナリー・センター(BCC)が主導するプロジェクトで、美食を軸とした国際的なオープンイノベーション・ハブだ。式典には1,500人以上が参加し、政府関係者のほか、ジョアン・ロカ氏(レストラン格付け誌「ミシュランガイド」で3つ星に選ばれたレストランEl Celler de Can Rocaのシェフ)など世界的シェフも出席した。
「GOe」は「おいしい未来(A Delicious Future)」の創出を掲げ、グローバルな視点から美食の再構築を目指す。教育・研究・イノベーションを通じて、持続可能性、健康、デジタル化、感覚の革新、企業支援などの戦略的分野に包括的に取り組む。新設キャンパスには、テックセンター、インキュベーション/アクセラレーション施設、コワーキングおよび企業用スペース、イベントホールなどが並ぶ。研究者だけでなく、地域の人々や起業家が気軽に集い、共に新しい食のかたちを試す「リビング・ラボラトリー」として設計されているのが特徴だ。
BCCはGoe開設に伴い、2030年までにあらたに7つの修士課程を新設し、年間約300人の学生を受け入れる予定だ(うち6割は海外からの留学生)。2030年までに博士課程では30件の研究を進める。さらに、スタートアップ創出・育成を約30件、アクセラレーションを150件規模で展開する計画。170社以上の企業や起業家、外部研究者がここを拠点に活動し、研究連携を行う見込みだ。
美食都市から美食テック都市へ
BCCは2011年に創設された、世界でも数少ない4年制料理大学。ミシュランガイドの星付きレストランが集積する世界屈指の美食都市サン・セバスチャンにおいて、美食文化の承継と学際的な探求を目的に教育・研究を続けてきた。近年、美食の世界では、発酵、菌糸体を利用した代替タンパク質、食料システムの変革など、よりフードテック的な課題意識が高まっている。「GOe」は、こうした潮流の中で、産学官民が連携し、世界の食の未来を共創する「開かれた知の実験場」として生まれた。
バスク州は、美食と食品産業が州GDPの10%を占める。BCCによれば、同センター単体でも創設以来2億ユーロ以上の経済効果を生み出してきたという。その知とネットワークをさらに拡張する「GOe」、そこで生まれるオープンイノベーションが、今後のさらなる展開を期待させる。
開会セレモニーの様子(ジェトロ撮影)
スタートアップによるプレゼンテーション(ジェトロ撮影)
(堀之内貴治)
(スペイン)
ビジネス短信 39111c213edd8e0c




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