チェコ下院選で最大野党ANOが勝利、ナショナリズム政党と政権奪回を目指す

(チェコ)

プラハ発

2025年10月08日

チェコ下院選挙(定員200)が10月3、4日に実施された。アンドレイ・バビシュ前首相率いる中道右派野党ANO 2011(ANO)が80議席を獲得し、改選前の71議席より伸ばして、再び第1党となった(添付資料表参照)。一方、市民民主党(ODS)、キリスト教民主連合=チェコスロバキア人民党(KDU=CSL)、TOP 09の中道右派与党3党の連合「SPOLU(『共に』の意)」の獲得議席数は52で、改選前の71議席より大きく後退した。また、与党第2の勢力である中道右派の市町村長・無所属候補者連合(STAN)の獲得議席数は22で、同様に、改選前の33議席より後退する結果となった。チェコ海賊党(2025年2月17日付地域・分析レポート参照)は、前回(2021年)の選挙でSTANと連合を組んで臨み、連立与党の一角を占めていたが、その後2024年9月に与党から離脱。今回単独で選挙に臨んだ結果、議席を改選前の4議席から18議席に増やして躍進した。ナショナリズム勢力としては、「自由と直接民主主義の党(SPD)」が獲得議席数15にとどまり、前回の20議席より減らした。一方、2017年に結成された新党のモータリスト(オート)が13議席を獲得し、初めて議会入りを果たした。

投票率は68.95%で、前回の65.43%を上回り、2002年以降に実施された下院選挙の投票率の最高記録を更新した。

ANOのアンドレイ・バビシュ党首は10月4日、開票後の記者会見で、組閣の可能性に関して、単独政権成立を目指して、SPDやオートの協力を求める意思を表明した。ただし、両党とも閣外協力ではなく、内閣への直接関与を望むことを明言していることから、交渉が難航する可能性もある。ANOは、公約の中で「チェコファースト」を掲げ、EUのグリーン・ディールの撤回を目指すとし、またユーロ導入を実施しないことを断言している。一方、EUおよびNATOの加盟国のステータスを維持することに疑問の余地はないとしている点で、EUやNATOからの脱退に関する国民投票の実施を主張するSPDとは一線を画している。また、オートが公約に掲げている「4年以内の均衡予算達成」について、ANOのバビシュ党首が不可能と発言するなど、オートも政策面でANOと相違があることから、各党がどこまで譲歩に応じるかが注目される。

チェコの憲法では、大統領が首相を任命し、組閣を委任することを定めている。ペトル・パベル大統領は10月6日、下院の議席を獲得した全党の党首との個別会談後の記者会見で、「ANOとSPD、オートの3党を基盤として、新内閣が発足し得る」と述べ、同3党による組閣の可能性が高いことを示唆した。

(中川圭子)

(チェコ)

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