大阪・関西万博「未来航路」で、中小企業83社が「技術力」と「アイデア」を世界に発信

(日本)

調査部調査企画課

2025年10月20日

大阪・関西万博で、中小企業庁、中小企業基盤整備機構(中小機構)による体験型展示「未来航路-20XX年を目指す中小企業の挑戦の旅-」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが10月3~7日に開催された。「技と想(おも)いで創る、いのち輝く未来」をテーマに、計83社が出展。日本の中小企業ならではの巧みな「技術力」と「アイデア」の数々を体感できる展示が見どころとなった。

10月3日午前中には開会式が行われ、関係者約140人が出席した。中小企業庁の山下隆一長官が「イベントを通じて、日本の中小企業のもつ価値や魅力が世界に認知され、新たなビジネスチャンスが創出されることを期待する」とあいさつした。

出展社の1つ、Raise the Flag.(本社:香川県)は、来場者に視覚障がい者向けの次世代型感覚デバイス「SYNCREO(シンクレオ)」の体験を呼びかけた。シンクレオは、同社が独自に開発したカメラシステムと視覚障がいに特化した人工知能(AI)が周囲の空間や障害物を検知し、その大きさや位置、近づいてくる人の動きなど立体的な情報を音と振動で伝える装着型デバイスだ。海外からの来場者も同デバイスを装着し、耳に伝わる振動の強弱やAIによる音声から、「視(み)えない」障害物との距離や、目の前にある障害物を特定する体験に参加した。中村猛代表取締役CEO(最高経営責任者)によると、体験者の国籍に関係なく「これなら視える」という驚きのコメントが寄せられたという。既に過去に出展した「国際福祉機器展(HCR)」や体験会に参加した視聴障がいのある当事者同士の口コミが海を渡り、世界各国から製品についての問い合わせを受けているという。現在、デザインの洗練および量産、国内販売開始の準備中だ。病院や視覚障がい者関連機関などへの納入を想定しており、今後は海外展開に向けて、米国ラスベガスで開催される先端技術見本市「CES」や世界最大級の医療機器見本市「アラブヘルス(Arab Health)」(アラブ首長国連邦・ドバイ)などへの出展も視野に入れている。

Byte Bites(本社、東京都)は、3Dフードプリンターを活用した食品開発試作システム「Mimetic Food System」を展示し、菓子のサンプルづくりの実演を行った。同社は、AIを組み込んだ自社ソフトウエアと3Dプリンターを組み合わせることで、食品設計、素材調整、3Dプリント、試作検証まで、複雑な一連の工程をワンストップで実現可能にした(注)。若杉亮介CEO・デジタルフードデザイナーは「このシステムを活用すれば、世界のどこであっても、試作品を同じ品質、同じかたちを再現できる。海外販売に向けて、ソフトウエアとプリンター双方の規制をクリアしていきたい」と話す。

中小機構によると、来場した各国関係者からは、自国にない新技術を出展した中小企業出展に対し多くの関心が寄せられた。

写真 開会式の様子(中小機構提供)

開会式の様子(中小機構提供)

写真 SYNCREO(シンクレオ)を体験する参加者(ジェトロ撮影)

SYNCREO(シンクレオ)を体験する参加者(ジェトロ撮影)

写真 Byte Bitesの若杉亮介CEOと3Dフードプリンターを活用した食品開発試作システム「Mimetic Food System」(ジェトロ撮影)

Byte Bitesの若杉亮介CEOと3Dフードプリンターを活用した食品開発試作システム「Mimetic Food System」(ジェトロ撮影)

(注)3Dフードプリンター本体はスペインのナチュラルマシーンズ(Natural Machines)の「Foodini」で、日本でも大手菓子メーカーなどが自社導入している。

(樋口彩乃、芳田杏咲)

(日本)

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