EUの偽造品摘発、数量減も推定価値は過去最高

(EU)

デュッセルドルフ発

2025年10月15日

EU知的財産庁(EUIPO)と欧州委員会は10月1日、2024年の知的財産権(IPR)侵害品摘発状況を公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU全体で摘発された偽造品は約1億1,200万点(前年比25.91%減)だったが、推定小売価値は約38億ユーロ(11.03%増)と過去最高を記録した。

このうち、EU域内市場での摘発は約9,800万点(前年比29.14%減)、価値は24億ユーロ(10.19%減)で、数量・価値ともに2023年の記録的水準を下回ったものの、過去10年で2番目に高い水準を維持した。最も多く摘発された品目は「CD/DVD(ソフトウエアを含む)」で、次いで「玩具」「装身具」「衣類」などが続いた。

一方、EU国境(税関)での摘発は1,970万点(前年比12.25%増)、価値は15億ユーロ(86.52%増)と、数量・金額ともに増加。特に高単価品の摘発が増加し、価値は過去10年で最高となった。摘発品の81.83%が破棄され(注)、うち57.60%が通常手続き、24.23%が小口破棄として処理された。

出荷元を国別でみると、点数ベースでは中国(42.38%)、トルコ(18.38%)、アラブ首長国連邦(UAE)(5.46%)が上位となった。UAEは初めて3位に入り、供給ルートの変化が示唆される。一方、価値ベースでは中国(49.29%)、香港(17.05%)、トルコ(16.64%)と続く。

輸送手段では海上輸送が全体の半数以上を占めるものの、金額でみると宅配便による小口輸送も増加傾向にある。EUは、eコマースの拡大や供給ルートの多様化に対応すべく、関係機関間の連携強化と情報共有を進めている。

なお、2025年からは、EUIPOはマイクロソフトパワーBIを活用した「ダッシュボード外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を導入し、国境・EU域内・全体の摘発データを視覚的に分かりやすいかたちで提供している。

(注)EU規則608/2013に基づく手続きで、知的財産権を侵害していると疑われる貨物がEU国境で発見された場合に、裁判手続きを経ずに貨物を破棄できる制度。知的財産権の権利者と貨物の保有者(輸入者など)の双方の同意がある場合に破棄される「通常手続き」や、貨物の数量が少量の場合(個人向けの郵便・宅配便)に貨物の保有者への簡易通知で破棄される「小口破棄」などがある。

(吉森晃、佐藤吉信)

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