第3四半期のGDP成長率は前年同期比8.23%、2期連続で加速
(ベトナム)
ハノイ発
2025年10月08日
ベトナム統計局は10月6日、2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(推計値)を前年同期比8.23%と発表した。第1四半期(1~3月)の7.05%、第2四半期(4~6月)の8.19%から2期連続で伸び率が加速した(第1~2四半期はいずれも改定値、添付資料表参照)。グエン・バン・タン財政相によると、新型コロナ禍による低迷からの反動増があった2022年を除くと、四半期の成長率としては2011年以来最高の伸び率となった。
第3四半期の産業別の成長率では、農林水産業3.74%、鉱工業・建設業9.46%、サービス業8.56%だった。農林水産業は、特に北部や中部で台風や洪水などの自然災害の影響を受けたものの、生産は安定した水準を維持した。鉱工業・建設業のうち、製造業の成長率は9.98%で、米国の調査会社S&Pグローバルによると、2025年7~9月のベトナムの製造業購買担当者景気指数(PMI、注)は節目となる50を上回る水準を維持した。第3四半期の輸出額も前年同期比18.4%増と大きく伸びた。
一方、最大の輸出相手国である米国向けの輸出には、8月の米国による相互関税導入後、変化がみられた。ベトナム税関局の統計によると、米国向け輸出額は、8月と9月の2カ月連続で前月比減少となった。現時点では、相互関税の対象から多くの品目が除外されているとみられるコンピュータ・電子製品・同部品などの輸出に支えられ、全体では減少幅は小幅にとどまっているものの、縫製品や履物などの輸出は落ち込みが顕著だ。米国の関税措置の影響により、今後さらに生産や輸出が減速する可能性がある。
サービス業では、業務サービスの成長率が13.72%と最も高く、文化・レジャー、運輸・倉庫、ホテル・飲食が10%を上回った。1~9月の訪問外国人数が前年同期比21.5%増となるなど観光分野などをはじめ消費市場が活況だった。
ベトナム政府は通年のGDP成長率の目標を、当初の8.0%以上から8.3~8.5%に引き上げている。ファム・ミン・チン首相は、世界情勢や自然災害などの課題と困難があることを認めつつ、各政府機関や地方政府に対し、目標達成に向けた努力を呼びかけている。
(注)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの状況を評価する指数。0から100の間で変動し、50を超えると「前月比で改善や増加」、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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